映画

クリード チャンプを継ぐ男

新宿ピカデリーにて。 公開2週目に入ったばかり。それも年の瀬の劇場としてはやや淋しい入り。 それでも、「いったいいつまでロッキーにしがみつくんだ?」とさんざん呆れられながら、蓋を開ければ『ロッキー・ザ・ファイナル』を胸に沁みる佳作に仕上げた…

ジャージーボーイズ

先週の日曜、新宿ピカデリーにてクリント・イーストウッド監督『ジャージー・ボーイズ』観た。本国では評価も動員も芳しくなかったみたいだけれど、公開して一週間とはいえ場内は満員。客層は老若男女まんべんなくといった感じ。 『レイジング・ブル』とか、…

『ホットロード』

17日の日曜日、新宿ピカデリーで『ホットロード』を観てきた。 待ち時間にパンフレットを買うと、紡木たく先生のメッセージが載っている。 「これまで映画にしなかったのは、そっとしておきたかったから」 紡木さんは作品と読者の関係を大切にしていて、自分…

かぐや姫の物語

15日新宿ピカデリーにて。 大変な創意と手間と資金が注ぎ込まれた力作、野心作であることは重々承知の上で、正直な感想を言えば、「生きる手応えさえあれば!」というかぐや姫の科白に反し、何ら心に強い手応えを残さず、淡く流れすぎて行ってしまったよう…

『風立ちぬ』宮崎駿

予告編で描かれていた、地面が波打ち唸り声をあげるような関東大震災、昭和恐慌の取り付け騒ぎで銀行に群がる群衆たちの描写(そして、これも予告テロップとして流れた「苦難の時代を、当時の若者はどう生きたか」の言葉)などを観て、これは零戦に象徴され…

『二十四の瞳』(54年 監督 木下恵介)

いつものことではあるけれど、優柔不断で筆が遅いため、やり残しの宿題を気にするようにずっと心に引っかかっているうちに、目の前のことに集中できない時間が重なって、どんどん現実と意識がずれていく。 淀むのが嫌で、無理に押さえ込んで目の前のことにの…

『キック・アス』最高だった。

『キック・アス』期待を大きく超えて素晴らしかった。 ダメ男のペーソス系青春映画と、荒唐無稽な劇画アクションヒーローものという、どちらにしろフォーマットが出来あがり過ぎて、自家中毒の臭みを引きずりがちなジャンル映画二本分の企画を、強引に一本に…

space battleship ヤマト

公開初日の水曜、アサイチで観てきた。 つい先日もNASAの地球外生命体(!?)に関する発表予告に興奮したけれど、あのヤマトが30年後(いや、四捨五入すればほとんど40年か…)実写で、それも時のトップスター達の出演によって映画化されていることが、当時夢…

『カラフル』(監督 原恵一 アニメ版)

『カラフル』、郊外のシネコンで、夏休みの中高生や親子連れに囲まれ、初日に観に行ってきた。 正直、前半の展開はちょっとぎこちなくてカッタルかったし、描かれ語られることに小さな疑問や違和感もいくつか感じた。必ずしも、疵瑕のない大傑作だとは思わな…

『アウトレイジ』

http://twitter.com/hitokirigoro より。『アウトレイジ』色々批評や感想並べるのが野暮に思えるような、上出来の男性向けプログラムピクチャー。堪能しました。 約19時間前 webから 『アウトレイジ』シャープで低体温な画と劇伴。余計な反省も言い訳も説明…

『ヒーローショー』

http://twitter.com/hitokirigoro より。『ヒーローショー』傑作。それも監督の「芯」がすべて詰まった真の意味でのデビュー作『ガキ帝国』、そして「これぞ娯楽映画の王道」というべきキャリアの発展的集大成『パッチギ!』に次ぐ、新たなメルクマールと言…

町山×宇多丸『ハートロッカー』論争と、『息もできない』

昨日の日記http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20100404で紹介した松田尚之さんhttp://d.hatena.ne.jp/border68/と、その後mixiのコメント欄でやり取りを続けていたところ、『息もできない』そのものから話が膨らんで、常々自分が漠然と感じていた昨今の映…

『息もできない』2回目

J:COMのオンデマンド放送で、『息もできない』2回目の観賞。 既に大筋を知った上でじっくり映画を味わってみて、あらためてはっきりとこの映画を好きだと思った。ついでに、信頼する同業者の松田尚之さんの感想日記http://bit.ly/aMk4zFにコメントつけよう…

『息もできない』感想追記

http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20100324の追記昨日の『息もできない』の感想、他の作品と並べて、この映画に足りないものばかりを並べたてるような、ちょっとアンバランスな文章になってしまった。 実はこの映画に距離が取れずに「照れている」のは、…

『息もできない』ヤン・イクチュン監督・主演

殺風景な路地裏風の坂道の途中ですれ違う、短髪ガニマタの与太者と、制服に野暮ったいピンクのカーデガンを羽織った女子高生。与太者が無造作に吐いた唾が、タイミング良く女子高生のネクタイに命中。向こうっ気の強い彼女は、悪びれない与太者にビンタを一…

マイマイ新子と千年の魔法

いつも愛読しているこちらhttp://d.hatena.ne.jp/Dersu/20091202のブログの、異様に熱の篭ったレビューが気になり、今週末の上映終了を前に、新宿ピカデリーにて駆け込み観賞。 昭和30年代の山口県の田舎を舞台に、土地の小学生と東京からの転校生の女の子二…

『母なる証明』

僕には、とにかく韓国のお国柄や人情、歴史、風俗といったことへの知識がまったく足りない。 だから、たとえば『殺人の追憶』を観ていても、あのアバウト極まりない警察の捜査風景の描写が、どの程度リアルなものなのか、それともポン・ジュノ監督の志向(あ…

『TAJOMARU』

上映終了直前駆け込み観賞。東映撮影所隣のシネコンで、客席は自分以外に一人だけ。散々な評判ばかり聞こえてきていたが、案外そんなに印象悪くなかった。ただ、宣伝の方向は思いきり間違ってたと思う。「ブレない男の生き様」どころか、育ちの良さから自然…

続『サマーウォーズ』について(または「あなたに褒められたくて」)16日追記

上では、「細田監督はじめ製作者たちは、実は田舎や大家族を描くこと自体に、強い思いを持っていないんじゃないか」という書き方をしたけれど、数日感想を反すうするうちに、少し考えが変わってきた。 彼らはもともと、かつての地域共同体や大家族に思い入れ…

サマーウォーズ(または『緋牡丹博徒』の復活!)

世評の高かった細田監督の前作「時をかける少女」に、フラットな人間特有の思い上がりのようなものを感じ、自分が大事にしている部分でかなり重大な違和感を持っていたので、それなりに身構えた観方をしていたはずなのだが、いやいや…見事にやられました。 …

レスラー

テアトルタイムズスクエアにて、公開終了間際の滑り込み鑑賞。 僕の周りでは、大方の映画ファンの熱狂の一方で、プロレスファンが一様に微妙な表情を見せている本作ですが、どちらかというと前者寄りの自分にとっても、もうひとつ釈然としないものが残る内容…

ハゲタカ 劇場版

いろんな意味ですごく難しい映画だった。 「現実全体の広がりと重量を、正確に映画に写し取ろうとして視点を盛り込みすぎ、逆に散漫に破綻してしまった」というのが端的な印象なのだが、それは単に構成ミスとか時間枠の限界ということだけでなく、もっと根深…

グラン・トリノ

戦争の地獄と戦時中の息苦しさを潜った結果、「何がどうあろうと、とにかく戦争だけは嫌だ」という、骨がらみの厭戦とある種のリベラリズムを身につけた人たちが、日本にもいる。映画の世界で言えば、例えば池部良、岡本喜八、殿山泰司といった人たち。 僕は…

サム・ペキンパー2題

臆病だからか、旧い人間だからか、どうも自分は、「自立した個人が、因習や既成概念に縛られず、また自分の個人的な背景や感情を越えて、フラットに社会に向き合う」といったことを、絶対の正論のように軽々と口にして照れることのないタイプの人を、信用で…

introさんに、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』のレビューを寄稿しました

http://intro.ne.jp/contents/2008/03/15_2014.html この映画、自他のエゴや弱さを認められずに超えようとした人間達の失敗を、いかなるカリカチュアにも逃げず、共感と怒りがない交ぜになった静かな緊張を貫いて撮り切った、凄い傑作だと思います。 それだ…

『野獣刑事』(82年東映セントラル 監督工藤栄一 脚本神波史男)

シネマアートン下北沢の特集上映「映像の刺客・工藤栄一」http://www.cinekita.co.jp/schedule.html#kudouに合わせて、introさんに『野獣刑事』のレビューを寄稿しました。 http://intro.ne.jp/contents/2008/02/03_1619.html 集団抗争時代劇の傑作を含む特…

六本木で『ガキ帝国』

シネマート六本木の、ATG特集初日で『ガキ帝国』。 劇場で観るのはかなり久しぶりだけど、やっぱり最高だ。 昔はじめてこの映画を観た頃、感動しきりだった俺に、冗長だとか、井筒はヘタクソだとか吹き込んでくる映画に詳しい知人がいて、ちょっとフクザツな…

東京・六本木・ATG

11月3日からシネマート六本木で始まるATG映画祭の連動企画で、INTOROさんに寄稿させていただきました。 http://intro.ne.jp/contents/2007/10/31_1611.html 映画祭のラインナップは以下。 http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/atg/index.html ざっと…

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

東京国際映画祭にて鑑賞。 しかし、本当に久しぶりの日記。 さすがにここまで間があいたのは初めてじゃないか。 しばらく書かずにいると、何でも「わざわざ書くようなことだろうか?」と恥ずかしくなって、益々筆が重くなる。 そんな状態でもこの映画は、是…

女渡世人 おたの申します(71年東映京都 監督 山下耕作 脚本 笠原和夫)

本日より一週間、ラピュタ阿佐ヶ谷、モーニングショーにて公開中。 http://www.laputa-jp.com/laputa/program/fujijunko/ 藤純子、そして山下耕作、笠原和夫コンビの最高傑作(俺は『総長賭博』よりも、断然こちらを推します)。 現在まで未ソフト化。 この…