2023-01-01から1年間の記事一覧
自分抱えているの不幸に対して周囲があまりに無関心だと、孤独感が高じて虚無的になりがちだけれど、やはりそれでも、誰より誰がより不幸かというのは最終的には主観の問題ということになる。自分より不幸な人に対する配慮というのは、だからごく大切なこと…
「私は男女・夫妻の平等に反対してゐるのではない。女性の解放は女性が目醒める事によつて可能になるといふのは浅薄な知見であつて、それにはまづ男性が目醒め、納得してくれなければ、どうにもならぬのである。男女・夫婦の間柄は労使の対立とは異なつて、…
通院の待ち時間に、芥川龍之介『舞踏会』を読む。帰りに、いつも竹の子生活でお世話になりっぱなしの音羽館で、岩波文庫のチェーホフ3冊と、ガスカール『種子』。何だか学生時代に戻ったような読書だが、楽しい。 しかし、学生時代は殆どの本を、何もわから…
彼の著書を読んだことが無く、たまたま見つけたまったく未知のアンソロジーだけれど、意外にも(失礼!)面白いセレクト(乱歩や星新一のような大メジャーから、俳人の西東三鬼まで)。編者のコメントも率直で良かった。「アフォリズムはいかにシャープでも、な…
相撲についての小文アンソロジー。趣味的に固め過ぎていない、緩くて自由で、けれど一編一編が粒立っている好アンソロジーだった。しかし、フラットであることがお洒落だった時代らしい、ストレートに柔らかさを主張するタイトルだけで、ズシンと手応えのあ…
「今、私の関心は、長命にはない。ほどのよいところで、うまく死にたいのである。私の父は九十七で死んだ。一部始終を眺めているが、死ぬ前のニ三十年は、うまく死にたいものだといい暮らしていた。その気持ちはよくわかる。老衰という死に方は、意外に楽で…
読み返していた山田太一さんのエッセイの中で触れられていた『ブーニン作品集』(群像社)を散歩中に寄った新古書店で見つけ、喜び即購入。チェーホフのこと』というここでしか読めないらしい回想が目当てだったのだが、思ったよりも短い覚え書き的な内容。引…
「生活者としての私たちは、多くの場合、「現実離れした」夢を持つ人間には冷たくなりがちである。そんな夢を捨てて、現実を正確に捉え(といったって、前述したように私たちが現実だと思っているものの実相は全然私たちの思い込みとはちがうものであることが…
「ひさご通りを背にして通りの端に立つとしらじらと人のいない通りが、ほとんど非現実の光景に見えて来る。わずかに残る寄席のあたりに人がいるが、それも呼び込みの人たちなのではないか、と疑ったりしてしまう。それからこみ上げるように、ふるさとを庇い…
寝苦しくて、エアコンをゆるくかけっぱなしで眠っていた。鼻が詰まって寝苦しく目を覚ましたら、まだ何時間も眠っていない。眠りが断続的で、不連続に夢を見ていたので、もう明け方くらいだとばかり思っていたのだが。実家のトイレは古い汲み取り式で、自分…
やれやれと、賢しらな憂い顔や義憤を、建て前や通念に添って安全に程よくのぞかせながら、市井の庶民性をさりげなく美化しそちらに付く顔をする、裏返しのスノビズム。しかし、それらが孕む半面の悪は決して指摘も批判もしない。リスクを取るだけの倫理が無…
勝とうとしなければ負けてしまうのは当たり前なのだが、要領よく調子に乗って勝とうとばかりするヤツが嫌いだから困る。そんなことを言っていられるのはまだ余裕がある証拠なのだろうが、無理に気持ちをねじ伏せるように突き詰めたとしても、不似合いな先回…
「まったくフェミニズム以後の男の凋落は先が見えなくて不安になるほどだ。真似したいような男なんか何処にもいやしない。仮にいたって老人の私では今更手遅れだけれど、いま女性たちのリアルな突っ込みに耐える「格好いい大人の男」の幻想は、どのように存…
上條淳士が、描かなかった『TO-Y』の続編だか、『SEX』(この作品は当時も殆ど読んでいない)の最終回だかを、当時のクールなフィティッシュさのかけらもない、量産するような描線と雑なスピードで描き散らしている夢を見た。架空の女性ファン編集者との楽屋オ…
「そして、これも今更といわれそうなことだが、次の違和感もあのころだけの思い出になってしまった。「あのころ」と書いたが、どうも私には、そんなに遠いことには思えない。駅から少し折れると、住宅地のその道を歩く人が前を行く若い女性と私だけになった…
「私も、以前から、こういう形の歴史小説を書いてみたいと思っていたのです。力不足でまだ手がつかないんですが、まず、天災だとか疫病の流行があって、人口が減ってしまう。すると、産めよ増やせよ、というスローガンで、人間が生産される。そのうちに、人…
ここ数年の急激な世相や流行(輸入)思潮の変転の中で、安定した世相の中では盤石な権威のように見えていたサブカルの神々たちが、様々に馬脚を現してしまった。自分もそのいくつかを批判してきたけれど、僕程度の影響力微小な者の批判でどうこうということも…
中上健次が、実は同和利権で太った実家の潤沢な仕送りを受けていた…なんて揶揄は、本当は揶揄にさえなっていない薄っぺらでつまらないものだ。彼が、上京してモラトリアムしていた戦後の子だったことは初期短編で自分で書いているテーマそのものだし、土着的…
古い知人と決裂したきっかけは、ある批評家が彼女たちが注力している問題があまりにクローズアップされ過ぎ、他の更に重要な問題を覆い隠すことになっていることになっていると発言したことについて、糾弾しようとする彼女たちに僕が反対したためだった。今…
ジャニー喜多川氏の具体的な性加害への批判はともかく、ジャニーズアイドル的な存在が、性的媚態であり強者や権力に媚びているから駄目な文化で、けしからん社会悪、政治悪だと断罪するのは牽強付会が過ぎるし、それ以前にナイーブ過ぎるだろう。何だか、つ…
相変わらず眠ダルさが抜けず、かといって日々のライスワークは待ってはくれないので、眠気覚ましに散歩ばかりしている。そして、古本屋の均一台に引っかかっては、少しずつ積ん読本が増えていく。活字を追っているとすぐに瞼が重くなって、なかなか消化でき…
5時に夢中でマツコが、テレビの悪影響が云々とこう五月蝿く言われる風潮だと、地上波で面白いドラマやバラエティをやるのはもう限界なんじゃないか、全部YouTubeやネトフリのような形にアーカイブして、新作もそこで変な制限抜きに作るのがいいんじゃないか(…
自分の気持ちにだけセンシティブな人たち、心でっかちな人々の鈍感さ。傲慢さ。人は他者をとことんのところで理解することは出来ない。当たり前だ。誰もその人の人生を生きたり、肩替わりすることなど出来ないのだから。誰でもない、何者でもない私の感情。…
人は誰でも、男でも女でも、内心には男性的な要素と女性的な要素が両方あって、混沌と混じり合っているものだと思います。男性的、女性的というのをはっきり定義しようと思うと難しいですが、例えばザドの人はマゾの要素を、あるいはマゾの人はザドの要素を…
性自認主義(を法的規範に組み込むこと)の何が問題なのか。「人は結局、自分が思いたいようにしか思わない」こうした気分や認識は、どんどん僕等の中に大きくなってきている。しかしかといって、自分の思いたい自分、思いたい現実を、他の者もそう思うとは限…
少し長いけれど、結婚や家族に対する、左右の対立に思うことを纏めてみた。 僕は今も単身者だけれど、自分は変わり者で、ちょっとハズレた生き方をしてきたから、かなり特殊なケースだとずっと思っていた。ところが気が付くと、いつの間にか世の中に中高年の…
本来すぐれて生活者であり、実務家だったはずの人々が、そうした自分たちの生き方や現場が稀薄になるとともに、メディアによる情報や思想的イメージに左右されるようになっていることこそ、由々しいことだと思う。 同業のとある先輩に、「大衆批判というのは…
「為にする議論」「ポジショントーク」というのは、立場によらず結局害毒の方が大きい。自分たちがやるくらいのことは、必ず相手もやる。お互いに「自分だけが正しい」に固執して、良いことは何もない。 皆が「自分だけは正しい」をやっていたら、結局、声の…
院の待ち時間に、酒井順子『日本エッセイ小史』を。「しかし『金魂巻』では、マルビの女子大生が「バイトで買ったバレンチノのバック」を大事に抱えている姿をヘタウマのイラストで描かれていたからこそ、読者は安心して笑うことができました。格差をレジャ…
まだゴールデンウィークだというのに真夏のような気温。寝汗をかいて体がかゆい。銭湯に行きたい。Tシャツに短パンで高円寺まで歩き、ビーインレコードでリンダ・ルイス『ラーク』のアナログ盤を買う。1st『セイノーモア』も売らずに持っているはずだが、例…