2022-01-01から1年間の記事一覧

大晦日

昨日までは近所がひっそりしていて、みんな帰省してしまったと思っていたら、今日は正月用の買い出しに出てきたのか、駅前が割と賑わっている。吉祥寺のディスクユニオンに行ったら、大晦日セール中。勝新の最後の『座頭市』のDVDを買う。公開中は撮影中の真…

2022年

今年ほど書く仕事の虚しさに苛まれた1年も無かった。同時に、日々書くことで認識を整理し、自分を納得させて、何とか支えた1年だった。そのために失ったものも大きいが、物事の理路を確かめ納得しなければ生きられない気質に生まれついたのだから、この摩擦…

かけがえのない俺・長谷川和彦について

●伝説の映画監督 もうずっと以前、たぶん30年近く前から(つまり、彼が30代そこそこの頃から)、「ゴジ」こと長谷川和彦は、すでに「伝説の」映画監督だった。当時の若い映画ファンにとって、彼の映画はスペシャルだった。巨匠による古典とか、しかつめらしい…

色川武大『疾駆』の抜き書きと後輩たちへのメモ

「もっともそれは、現実に即した考えではなくて、子供の怠惰な空想のようなもので、本物の劣等の世界を知っているわけでもなく、またそこにあまんじる覚悟も定まっていなかった。ただ自分でわかっているのは、唯々諾々と他人のいいなりにはなれそうもない、…

通念

どんなに正しいことであっても、木で鼻を括ったような言いっぱなしはどうにも性に合わないのだが、かと言って一人一人に話を通じさせるなんてことは不可能だから、板挟みのストレスが常に著しい。どんなにおかしなことであっても、それが通念である以上、人…

人を犯罪に駆り立てる力も無い痩せた表現なんてつまらない

https://bucchinews.com/mobile/society/7040.htmlの山本直樹の発言への感想。 権利を盾に、他者への配慮も無くごり押して平気な感覚が横行するのは嫌だし、表現の自由ったって、みんなな自分の世間には思い切り忖度してるじゃんとは俺も思う。ただ、「自民…

個人という欺瞞

戦争中だって、一人一人を息苦しくさせていたのは、国とか軍隊とかいった遠く抽象的な権力よりも、まず隣近所のおじさん、おばさんであり、学校の先生や上司であり、同僚や級友たちからの非難、否定、蔑みの視線だっただろう。それは、現在の自分にとっても…

色川武大×油井正一「日本に「モーニン」がやって来たころ」

ホンモノを見ちゃった 油井「ジャズ・メッセンジャーズは、やはり東京産経ホールで聞かれましたか」 色川「ええ」 油井「僕は初日の1月2日だったんです。すごい人でしたね。ホールのロビーで四斗樽を鏡開きして客にふるまい酒なんかして、大変な盛り上がりで…

「弱者の符丁」に殺到する権力

思想や立場の上下左右にかかわらず、政治的に影響力を持とうとする集団が、権力や金の流れに強引に食い込んで掌握しようとすることは、良いこととは言わないが、人の世の常だなとは思う。ただ、女性支援を看板とするNPOによる傍若無人が、他の陣営の同様の行…

『夢に見た日々』

未見だった山田太一ドラマ『夢に見た日々』をYouTubeで見ている。まだ途中だけれど、予想を超えた深まり、奥行きに嬉しい驚き。歪んだ孤独な人間の酷薄な割り切りが競争原理の中では力を持ったり、見栄や意地で失敗し続け周囲の信頼を失う人間が魅力的に描か…

色川武大×小田島雄志×神吉拓郎×油井正一「銀幕の恋人をフルイにかけりゃ」

ーお集まりいただいたのは、とことん映画好きの方々ばかりです。今日は一晩、かつての「ミーハー」少年に戻っていただいて、女優品定めに大いに花を咲かせてくださいますよう…。 油井「一番年長のぼくが青春の血を沸かした女優たちは、みなさんには凄いばあ…

思索的な文章の復権

どんな作家の文章や発言を読んでいても思うことだけれど、何か所与の物への感想を語ると、対象が具体的だから言葉も細かく行き届いたものになり易い。しかし、人間一般や社会をどう見るか、どう生きるべきかといった思索を語ると、時勢に流されたり、特定の…

必要なのは自分の居る場所の自覚と反省

文化多元主義なんてこなれない言葉だけが流通していると、実際以上に現実を難しく感じてしまいがちだけれど、僕等がまず身近で感じている問題というのは、移民の受け入れが、企業にとっては安価な労働力の大量流入によって、国内のブルーカラー労働者、下層…

過去も現在も裁けない

親の介護とか没後手続きに追われて生活状態はずっと苦しいが、自分の場合本当に心身のバランスを損ねるくらい苦しかったのは、親達を具体的に援助できる経済力もなく、そうした自分の事情や、親達自身の現状認識の歪みを説得することも不可能で、それらを実…

尾崎豊『放熱への証』ディスクレビュー(再録にあたり弱冠の修正)

彼の死後、「尾崎はずっと10代の偶像を求めるファンに縛られ続け、ラストライブとなった代々木オリンピックプールの公演も、そのため賛否が分かれてしまっていた」といった、一見同情的な言葉が、彼の音楽に深く興味を払ってこなかっただろう人々から盛んに…

尾崎豊『誕生』ディスクレビュー(再録にあたり一部修正)

『街路樹』発表後の東京ドームライブを最後に、尾崎はデビュー時から二人三脚のように歩みを共にしてきた所属事務所、マザーエンタープライズを離れ、ファンには消息が見えなくなった。今までも活動は危なっかしく断続的だったから、待たされることには慣れ…

尾崎豊『街路樹』ディスクレビュー

これほど発売を待ちわび、またじらされたアルバムはなかった。おそらくこれは尾崎直撃世代共通の思いだったろうと思う。10代最後のツアーの後、ニューヨークに渡っていた1年の間に、フィルムコンサート「625DAYS」が20万人を動員。本人不在の間に、認知度は…

尾崎豊『LAST・TEENAGE・APPEARANCE』ディスクレビュー

尾崎10代最後のツアー「LAST・TEENAGE・APPEARANCE」の東京公演、85年11月14、15日の代々木オリンピックプールに計2万5千人を動員したライブを収録した、尾崎初のライブアルバム。この日のライブは翌年1月に『早すぎる伝説』と題されテレビ放映されて(深夜の…

近くの身内より、遠い他者への配慮を

自分の好きな対象に対しても、同好の人たちの目が気になって、なかなか率直な感想や考えが言えない。これは、自分にとって近い人間関係であるほど、率直な意見や批評、批判批判が躊躇われることと同じですよね。だから、よその世間の不正や、旗色の悪い感性…

尾崎豊『壊れた扉から』ディスクレビュー

尾崎10代最後のツアーの最中、20歳の誕生日の前日に発表された3rdアルバム。前作からインターバルはわずか8ヶ月だが、前2作に顕著だったストレートな主張や反抗のトーンはほとんど感じられない。溜め込んでいた感情の吐露や異議申し立ては一通りやりきった、…

尾崎豊『回帰線』ディスクレビュー

アロハに麻ジャケットをひっかけた街のチンピラみたいないでたちで、フォークギターを抱えての「シェリー」の絶唱からスタートする初期の尾崎のライブは、フォークにもロックにもニューミュージックにも収まらない、ミドル80sの不良少年としか言いようのない…

尾崎豊『十七歳の地図』ディスクレビュー

このアルバムが登場した時、いったいどれほどのインパクトを持っていたか、現在、どうやって伝えたらいいのだろう…。当時の世相、流行の潮流にどれほど逆行していたか。それを物語るように、発売当初のプレス枚数はわずか2000枚強でしかなかった。冷戦下の繁…

尾崎豊インタビュー1986春「俺は「カリスマ」よりも「スケベ」を信じる」(週刊プレイボーイ86年1月28日号)

ー正月は元旦からコンサートだったという話ですが。 尾崎「ツアーの最中ですから。結局、去年は4日にいっぺんの割合でコンサートをやってたっていう本数なんですよね」 ープロレスみたいだね。 尾崎「(笑)そうですね。仕事らしい仕事をしてるって実感みたい…

藤沢映子「尾崎豊ロングインタビュー」(パチパチ86年2月号)

ディーンエイジャーということばの持つイメージは、せつなく、甘ずっぱい。大人たちがうらやまし気にみつめる若さの使い道に右往左往。青くて、持って行き場のないエネルギーを抱えたまんま、ワケもなく泣くことが多い。家庭という最小規模の社会を経て二番…

状況と自分の相性に対する緊張感の反比例

自分では、随分速度は鈍ってはいるけれど、日々いろいろなことに驚いたりうろたえたりして、今もというか今更というか、いろいろ認識を新たに積み重ね、少しずつ成長しているようなつもりでいる。特に、コロナ禍や景気後退、ウォーキズムの俄かな蔓延などで…

阿佐田哲也「兄弟分に」

昨夜、小島さんと某所で遭遇して、いちだんと贅肉のついた彼の腹のあたりを眺めているうちに、ずいぶん久しく彼と会っていないことに気が付いた。例の麻雀新撰組を解散して以来、人ごみの中でたまにチラリと顔を見るぐらいで、ほとんどしゃべる折りがない。…

阿佐田哲也「ギャンブルという鏡」

競馬、競輪、競艇、オートレース、麻雀をはじめとする室内遊戯、東京じゃ許可されていないけれども犬や軍鶏をかみあわせる奴、野球もボクシングも賭けの対象になっているし、近年はゴルフがギャンブルの代表的種目になってきた。まったく、好きだねえ。日本…

今年の私的10冊

『夜風のもつれ』色川武大「天子さんへ」(山海塾月報)武田百合子『風の便り・山田風太郎書簡集』『森と湖のまつり』武田泰淳『富士山と太陽の下で』木暮武彦『タコピーの原罪』タイザン5『凌ぎの哲』原恵一郎『流れ舟は帰らず』笹沢左保『踊る菩薩・ストリッ…

忘年会

今日は、毎年暮れに集まる大学時代の友達2人と忘年会だった。自分の業界周りや、Twitter上の人たちと違って、彼等にはほとんどコロナ前との温度差が無くいつも通り。それがとても新鮮で、久し振りでリラックスした人間関係に安らいだ。彼等の日々の現場には…

追っかけインタビュー阿佐田哲也 (シティロード84年9月号)

ー『麻雀放浪記』が映画化されるという噂は今までに何度も耳にしたんです。深作欣二が監督するとか、日活が準備稿を阿佐田さんの所へ持ち込んだとか。そのたびに我々は大いに期待したんですが、どうも阿佐田さんが映画化をなかなか承諾しないらしい、という…