introさんに、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』のレビューを寄稿しました

http://intro.ne.jp/contents/2008/03/15_2014.html
この映画、自他のエゴや弱さを認められずに超えようとした人間達の失敗を、いかなるカリカチュアにも逃げず、共感と怒りがない交ぜになった静かな緊張を貫いて撮り切った、凄い傑作だと思います。
それだけにただ一点、現在の若い人たちが観た時に、彼らのあまりのマジメさと行動力、そして語られる理想の大きさと、実際の活動の現実性のなさのギャップが、彼らの現実からきっぱりと切れた「カルト集団の悲劇」にしか見えないんじゃないか、との危惧も、強く感じました。
けれど「正しさ」に飢える気持ちが、現在の人間に本当に無くなってしまったとは、僕には思えない。
「正しさ」に同化しようとして無意識の欺瞞を重ね自滅した人々を、この映画は哀しく、容赦なく描き、それを超えるものとして最後に「個人の勇気」を提示している。けれど、すでに「個人」であるという過信、「自分」を支えるものの根拠の弱さを見つめる「勇気の無さ」こそが、実は現在の根本的で最大の問題なんじゃないかと僕は思っています。
自己啓発」的なものの蔓延や、「市場原理主義」に対する個人の無力ぶりにも、端的に現われているように。


今回の文章は、正直ここについての言及に終始してしまい、映画そのものに対するレビューとしてはかなりアンバランスなものになってしまったんですが、できれば総評として、まず以前書いたこちらhttp://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20071021#p1を読んでいただければ、より文章を咀嚼しやすいかと思います。
加えて、今月末に講談社から出る『パンドラ』というライトノベル誌に寄稿した長谷川和彦論も、このテーマを具体的なディティールと共に拡大して展開したような内容になっています。
年配者にはちょっと手に取りにくい種類の雑誌ですが、こちらも併せてご一読いただけると幸いです。

パンドラVol.1 SIDEーB

パンドラVol.1 SIDEーB