夢に出てくる旧友の話

高校卒業以来、いや、高校の途中からまともに話すことも無くなってそれっきりなのに、ずっと夢に常連のように登場してくる幼なじみがいる。彼は小学3年の時にやってきた転校生。お母さんは母子家庭に育った苦労人で、外に働きに出ていたのだが、教員の旦那さ…

島の祖父と旧友の夢

半分は加齢のため、半分は職業病でもともと眠りが浅いのに加えて、花粉症の鼻づまりで、短く断続的にしか眠らない日が続く。昨夜は、瀬戸内の小島にある父の生家に帰省中(自分が生まれ育ったのは母の生家だから二重の帰省だ)、何故か大学時代の北朝鮮系の在…

村上龍についての覚え書き(Twitterでの会話から)

「村上龍、新作で、自分はビリー・ホリデイは聴くけど、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ボーンやアレサ・フランクリンは聴かないと書いているのが印象的でした。彼女たちの音は周りに仲間が沢山いる感じがするけど、ビリー・ホリデイは独りだからと。こう…

横丁の蕎麦屋の安心と、それを越える時の覚悟と

オタクを、広い意味でのマニアとか趣味人という意味で捉えれば、もはや自分などよりごく普通の友人知人たちの方がずっとオタクだ。たまに集まれば話題は大抵ロックや昔のテレビや時代小説。単純に昔は野球が共通の話題だったのが、今はそれが細かく分かれた…

定義の曖昧な言葉が当たり前に使われる現実とは何か

「ネット右翼になった父」鈴木大介さんインタビュー 晩年に豹変した亡父、嫌悪感を乗り越え検証した結果は(好書好日)https://news.yahoo.co.jp/articles/390adc8f97e0c12d9bcf7801b126db13301be72c 生真面目な好著だけれど、本当に正直に言えば、まだまだ…

歩兵のように

「自分たちは歩兵のような消耗品だ」世の中の多くの人はいつも、気持ちの深いところではそれをわかっていて、意識の底に沈めて、無事な今日をそれなりに生きてるんだと思う。自分のように、変にこだわってしまうちょっとおかしな奴以外は。 目の前の不正や理…

ネットから離れていた一週間

一昨日まで一週間近く電話が止まっていて、ネットから完全にはなれていた。その間、古い文芸誌の短編小説やエッセイを読み返していた。先日上げた武田泰淳の談話や、「海」の彼の追悼号の島尾敏雄や小島信夫の文章が心に残った。ゆっくりと落ち着いた文章を…

村上龍の新刊を読んだ

村上龍の新作を読んだ。彼を見て、残念ながらまったく自由の風は感じないけれど、じじいになっても小説の中でだけはツッパッてるところは憎めない。時代と噛み合わなくなっても、いくつになっても、彼なりに同じものに苛立ち、憧れている手応えだけは確認で…

手がかりがなく、途方に暮れる

自分の感覚はそのままでは受け入れられない、だから隠して何食わぬ顔で正解に口裏を合わせていないとまずいと、物心ついた時には思っていた。だから、相手や周囲の顔色を常に伺うし、サービスも譲歩も反省もできる限りする。しかし、そうでなかった者は、進…

坪内祐三『ストリートワイズ』再読

坪内祐三『ストリートワイズ』再読。97年刊。オウムの地下鉄サリン事件と、その後の論争(サブカルメディアや若者の間で「大人になれ派」対「子供のままでいい派」とも呼ばれた)の余韻の中での初読だった。当時は正直、オピニオンとしては微温的で迫力が足り…

武田泰淳「三島由紀夫のことー一九七四年夏の談話ー」(「海」77年1月号)

『富士』を書いていて、最後をどのようにまとめようかと考えていたところで、三島由紀夫さんの事件がおこったんです。彼が死んでくれなければ、終わらなかった作品ですよ。三島さんが死んでくれたおかげで、なんとなく筋が出来ちゃったような気がするんだな…

臆病な怠け者たちの傷つきました戦争

とあるバンドのライブ画像を見て、彼等を鏡に現在の人や世の中がほとほと嫌になってしまうような、うんざりした気持ちになっている。無名のアマチュアバンドだし、特定の誰かを攻撃したいわけでは無いから、名前は伏せたい。彼等のような人たちにぶつかる度…

記憶の行間と武田百合子さん

「ゴミを棄てる人におねがい。ビニールプラスチックは月曜だけ。火木土は台所のゴミです。きまりを守らぬ人は出すべからず。ビニール袋に入れて出してはいけない!!それから、エスを出した人、至急持ち帰る事!!」あんまり腹を立てたので、イをエとお国訛り通…

色川武大「筆不精」より抜き書き

「私も自分がズボラであることはよく承知しているから、はじめから緊張して、さっそく翌日から手紙を記しはじめた。字もまずいし、手紙文も苦手だが、そんなことはいっていられない。しかし、近頃のようにリコピーなどない時代で、いちいちペンで書くとなる…

サルマタの山と学校の机の中

友達と『男おいどん』の話をしていて、「おいどんはあんなに貧乏しているのに、どうしてサルマタ(縞パン)を洗わず百枚以上も溜め込んでしまうのか、お金が勿体ないと子供の頃から不思議だった」と大変尤もな感想を聞き、当たり前のように共感していた自分に…

そらぞらしく虚しい日々。質量の失われた日々。

吉祥寺のディスクユニオンへ散歩に行き、ウォーレン・ジヴォンの未知の1stアルバムの中古CDを1枚だけ購入。階下のアップリンクを覗くと、公開したばかりのシン・仮面ライダーに意外と人が入っていない。自分も、ウルトラマンも仮面ライダーもたっぷりお世話…

個人も社会も曖昧にぼやけている

人の動機には、まず直接に深く関係した他者や現場への感情が大きく作用するものだと思うが、ネットでの関係や世論、感情との二重生活になっているから、どちらをどの程度本当と考えたらいいかの判断が誰にもつきにくい。互いに影を落としあっているはすの、…

今も変わらず(情報)バブルは真っ盛り

「泰山鳴動して鼠一匹も出ず。それじゃあみっともないと思ったのか、最近は予想屋みたいな存在があまり出てこない。インテリも、奇妙に黙っている。ちょっと不安そうなのは、街の中のひと握りの人たちである。実をいうと、私も、そろそろ機が熟してきたのか…

やせ我慢しながら相哀れむ

可愛い女性とか小動物、社会が公認する善良な弱者に対しては優しくして気分がいいし、人の欲望に叶っているから世間の共感や評価を受けやすいのは事実だろう。真の弱者は外見や性格などが不自由で、気にかけても楽しくない、地味だったり嫌われ者だったりす…

曖昧な情の世間が寛容で優しいわけではない

なあなあで曖昧な人間や世間が、他者に寛容で心が広いなんてことは当然ながら無い。曖昧なようで、試験当日に前日勉強しなかったと吹聴しあうように、内心では牽制しあい、互いの顔色や世の趨勢、潮目を読み合っている。そこで浮き上がったり、落ちこぼれた…

深沢七郎×大江健三郎対談のメモと感想

深沢「なぁーんにも思想のない小説を書きたいなあ。恋をしていても、好きとかきらいとかを、とっちゃうと、どうなりますかねえ、思想をとると」大江「イギリスの作家のユーモアにはそういう傾向のがあるようですね」深沢「スカーッとしていいんじゃないかな…

「ほっとひと息つきたくなったとき、今の人たちはどこに出かけていくのだろう」

「浅草の一番の魅力は、体制の一番尻っぽの方におくれてつき従がい、損な役割ばかり担って気息奄々として歩いている。そのくせ妙に楽天的で頑丈であり、なりふりかまわずでたらめをしてもケロリとしているところがある。いうならば体制の内と外の境界のあた…

権威好き序列好きの学校人間が文化をダサくする

「「井上(ひさし)は前掲の一文に書く。「現実の浅草はあんなものではない。銀行や役所と同じこと。仕事を大事にする役者や踊り子たちがほとんどで、そうでなければ曲がりなりにも興行など成立するわけがない」。(…)なるほど。ただ、少年のころから、色川武大…

贅沢病のお客さん達の不幸

反米か親米かとか、グローバリズムの支持、不支持というのは、本当は多くの庶民がそのこと自体を選んでいるわけではないと思う。一人一人が何より嫌で避けるのは、「自分が」事を荒立てたり、浮き上がったりしてしまうことだから。現状を維持したい、失いた…

爛熟と退廃の差

爛熟と退廃の違い。それは他者を舐めないこと。自分の中にどれだけの他者を住まわせる度量と姿勢を持つことができるか、ということ。他者の無い人や世の中は、一見我が儘なようでスケールが無くケチくさい。ただ欲しがり屋なだけで、ガキっぽく貧相になる。…

可能性に呪縛され自由を失う

人間はある面確実に、性欲とか本能とか身体条件に縛られていて、如何ともし難くそれに振り回されながら生きている。しかし同時に、本能や欲望の在り方が、他の動物のようにきっぱりとはしておらず、欲望に経験や想像力が作用して多様な個人差を生むから、面…

心でっかちの世の中

昔、友達と「繊細なのは良いけれど、内向きにだけセンシティブな人は困る」とよく話しあった。自分の気持ちには細かくこだわるが、他人のことには配慮無く無頓着な人、くらいの意味。今は、ネットごしに同類を見つけやすい多様性の世の中だから、肩身の狭か…

狭い心と安易な言葉

意味の曖昧な怪しい新語、造語を多用する相手に思わず身構えるのと同様に、クソとかクズとか取り付く縞なく排他的な罵倒語が乱れ飛ぶ様にも心が冷える。乱暴だけど後を引かない喧嘩とは真逆の、虚弱と過敏と心の狭さが根っこだから尚更だ。

逞しさとダンディズムに裏打ちされた優しさを

自分はどこまでも考えや見通しというものが甘いのかもしれないが、人心というのはどうしてこう予想を超えて低きに流れてしまうものなのか。世の中が貧しくなれば、生活は多少苦しくなるかわりに、人の気持ちは良くも悪くも引き締まるだろう、人間の輪郭がく…

人々の有り様を好きになれずに生きていくのは虚しい

何が良きことかの方向が無ければ、物事は力関係とご都合主義へとなし崩しになってしまう。しかし、良きことにピュアになり過ぎると、そうはならない人間の弱さや図々しさにすべてが虚しくなってくる。そんな時の拠り所が大切なのだが、誰もが普段それを必要…