2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

俺にはわからねえ(それでも私は)

心弱い人や、生真面目で物事の許容量の幅の狭い人は、その狭さの純度をそのまま生きるよすがにしていることが往々にある。理屈では分かるのだけど、現に別の実感、体感を持つ他者が目の前にいるのに、何故、頑として思い込みを譲ろうとしないでいられるのか…

簡単に仲間が見つかってしまうことの問題

Twitterで、同じ気持ち、同じ考えの人を見付けやすくなったのはいいけれど、そうなると気が大きくなってしまって、一人の時にはあった迷いや遠慮が消えてしまって、立場が急に固まり過ぎて、考えの違う者に対して強硬になってしまいがちだ。便利になると、す…

「モヤモヤ」を振りかざす人間が不寛容を生む

「もやもやする」というのが、他者や現実を批判する言葉として濫用されているけれど、現在の問題はむしろ「もやもや」に耐える胆力が極端に失われて、何かそれを裁く正解があるかの思い込みに簡単に閉じこもってしまうことだと思う。小説や映画などへの参事…

宮部みゆき『夢にも思わない』

浅羽通明さんがTwitterで紹介されていて興味を持ち、宮部みゆき『夢にも思わない』を読んだ。普段ミステリーを殆ど読まないので比較では分からないのだけれど、引き込まれる面白い小説だった。ただ、ここで事件のキーになっている中学生の女の子の、半ば無意…

「趣味人間」の問題

やはり、表現や情報商品を受容したり、批評したりすることだけが自己目的化しているマニアとかオタク(それはもう、一部の人を指す言葉ではなく、アイデンティティが消費者としての自分になっている現代人一般の基本姿勢のようになっている…)というのは、隣人…

懐かしい人たちへの後ろめたさ

昔(個人的な感覚では昭和から平成にまたぐ頃まで。僕が住んでいたのは田舎だから、街場とは結構時差があるかもしれない)は。シニカルになれない、シニカルになることが気性に合わないタイプの人というのが、今よりずっと多かった。今でもそういう人は本当は…

1991年のユキヒロと慶一くん

空気吸うだけhttps://m.youtube.com/watch?v=wr-3p0faxCU&feature=youtu.be 犬の帰宅https://m.youtube.com/watch?v=oU4s8KXxe3A&feature=youtu.be この頃の高橋幸宏や鈴木慶一の、平坦な日常に膿んだ気分の表出に、正直自分はかなり点が辛い。当時は、こち…

尾崎豊インタビュー「新作解説、ロッキンオン的批判への回答」(ロッキンオン86年2月号)

熱病の様相を帯び始めた尾崎ストーム。ステージを降りた「若きカリスマ」が自ら語った試行錯誤の全て。 自分の問題意識とか価値観を人にあてはめるのはやめたんです ●尾崎豊自身が語る今回のアルバム、というので始めますか(笑) 「なるほど(笑)。えー、20才…

尾崎豊インタビュー「若き世代の代弁者が語る、真の自分と要求されるイメージ」(ロッキンオン85年5月号)

半ば宗教ともいえる異常な盛り上がりを見せる尾崎豊ブーム。若き世代の代弁者として崇め奉られる19才の教祖が語る、自らの自虐的な性格、孤立感、熱烈なファン、そしてニューアルバム「回帰線』。 ボーカルはワン・テイクで殆ど済ませちゃいますね ●まず『回…

尾崎豊インタビュー「18歳の美形、マジメさと強引さと根暗と」(ロッキンオン84年8月号)

『十七歳の地図』で昨年デビューし、最近行ったルイードのライブでは18才の新人とは思えない存在感あるパフォーマンスを展開した尾崎豊。すでに熱狂的なファンを獲得して、メジャーなブレイクも時間の問題と言われている。いわゆる口当たりのよいポップスを…

紡木たく『瞬きもせず』を再読し始めた

紡木たく『瞬きもせず』を再読しはじめた。自分にとって最も大切なマンガの一つだけれど、滅多に読み返さない。人間、自分の気持ちにピュアになり過ぎると身動きできなくなってしまうように。彼女の作品はとても柔らかく優しいのに、繊細で凛としたものが隅…

バンドブームとその後の記憶

YouTubeで80年代後半から90年代、バンドブーム期以降の曲を聞き返していた。僕が日本のロックの多大な影響下で自我形成していた時代の、すぐ後にあたる時期。自分が支えのようにしていたロックが一般に支持を集めるようになると嬉しいと同時に、人気を得ると…

北中正和「ストレートなメッセージがさわやかに届く尾崎豊の歌」(「ミュージックマガジン」85年1月号)

目が気になった。10月末の土曜日の夕刻。場所は原宿のカルデサック。開店までにはまだあと少し時間がある。ガランとした店内。尾崎豊は、テーブルの向かい側にすわって、ワイルド・ターキーのオン・ザ・ロックを手にしている。何のへんてつもないインタビュ…

続・広島ピースコンサートの記憶

https://bakuhatugoro.hatenadiary.org/entry/2023/01/09/181420 からの続き。 https://m.youtube.com/watch?v=7EuOK2K0Pw0&feature=youtu.be このラストのセッションにも参加している野本直美さんというシンガーソングライター(自分は未知の人だった)がカヴ…

Alive!Hirosima1987

Alive!Hirosima1987 岡村靖幸&尾崎豊https://m.youtube.com/watch?v=bjg40a-fr5k&feature=youtu.be 尾崎豊https://m.youtube.com/watch?v=3nyAY_tS3z0&feature=youtu.be 佐野元春https://m.youtube.com/watch?v=tfyi8Z8NAtA&feature=youtu.be エコーズhttps:…

藤沢映子「尾崎豊ライブドキュメント」(パチパチ85年4月)

このごろ、「尾崎豊」が嫌いになっている。 「驚くべき10代」「あふれる才能」「新しい時代のオピニオンリーダー」「今いちばん注目のロックンローラー」 最大限の賛辞を並べた雑誌のタイトル。もう息がつまりそう。 1月12日、東京ては初めてのホール・コン…

苦くても事実は事実

ただ生きることだってそれなりに大変だけれど、なるべく卑怯でなく正直に生きようとしたら本当に大変だ。無数の二律背反を、解決の付かないまま抱えて、自分の考えや感じ方をいじめ続けなきゃならないから。身動きが出来なくなって、人との競争も負けばかり…

弱者の陥りがちな罠への覚え書き

そう何もかもに、はっきりとした解決があるわけはない。解決が無い問題にじっくり取り組み続けることは大切だけれど、充分な解決は「ある」と思い込んだり、期待し過ぎたり、急ぎ過ぎたりすると、必ず見えないところで立場の弱い者にしわ寄せがいく。 「人が…

早すぎる余生

人生の残り時間も未知数もたっぷりある若い時というのは、手に余る程自由と責任を背負っているということだから苦しい。何だって決まってしまう前が、いちばん苦しいものなのだ。 年を取って残り時間が見えてくれば、今更修正は効かないとか、出来ることは少…

他人の納得を覆すことへの責任

政治的課題の検討を軽く見るつもりは無いけれど、一つの課題をめぐる争いや、それに敗れる度に、この世の終わりのような大袈裟な騒ぎ方をされ続けていると、そうは言っても自分も世の中も何とか無事に続いているのだし、何だか慣れっこになって醒めてしまっ…

人間に通じていない映画評論家の問題

映画評論家の仕事を、再考すべき時期が来ているように思う。彼等は確かに多くの映画を見て知識を持ってはいるけれど、それは人やその社会について深く突き詰め、考えてきたことをストレートに意味しない。だから、映画人が人間観を込めて作った映画を、政治…

新世界

みんながみんな、政治的にヒステリーのようになっていた数年が過ぎ、壊れ失ったものも小さくはないけれど、衰退しゆくメジャーメディアの表面はともかく、これまで盤石と思われた価値観がかなり弛み、相対化されて、敵味方のように別れていた多くの知人たち…

独りを支えているもの

どこかがはっきりと具合が悪いわけでは無いのだが、何となく食欲もわかず、起き上がれないまま1日ウトウトしていた。特に物語のない、物思いのように漠然とした夢を見ていた。努力してそうしているわけではなく、気が付けば何十年も同じ本を読み続けて、同…

武田百合子(談)「がんばらなくっちゃ映画論」

武田は昔から映画好きでした。いま年ごろの娘が赤ん坊で、まだグニャグニャして首なんか据わらないようなころから、三人暮らしなので映画に行くときは、娘を連れていかないと困るの。首が据わらないので自分で首をたててやって見るぐらい好きだった。藤沢へ…

阿佐田哲也×芹沢博文「目の細い人は勝負ごとが強い」

芹沢「麻雀は体力とか集中力とかいうことも相当ありますが、ぼくは金に対する執着心がないと勝てないと思うんですが、この論法は変ですかね?」 阿佐田「ぼくなんかも、そういうところがないとはいえないですけど…」 芹沢「もっとも、先生はもう金ができてい…

ニュース報道は取捨選択によるフィクション

陰謀論=恣意的なデマや、無反省な思い込みをばらまくのは当然良くないないが、もっと突き詰めて言えば、どんな個人にも他者やこの世のすべてを把握し理解することなど、本当は不可能だ。この前提を忘れて自分は理解出来ていると思い込み、食い違う他者の声に…

いじめは発生した世間の内部では解決できない

「旭川女子中学生いじめ凍死事件」久し振りの続報。https://m.youtube.com/watch?v=rvkmI5PN-s0&feature=youtu.be 発生した世間の内部での、いじめの究明とか解決は不可能という思いを強くするばかり。成員全員が共犯のような状態での不都合なのだから、なに…

日本は個人でも宗教でもなく、世間の国

(現在の日本人が)特定の何かを宗教的に盲信しているというのとは、ちょっと違うと思う。自分の世間の空気や趨勢をうかがって、それに添うという生き方しかできない。ただ様子を窺うことを、自分で考えてると錯覚してる。独自に考える為の「独り」を支えるバ…

優等生の点数稼ぎには付き合ってられない

渡辺あやの脚本は一貫して大嫌いだ。現在に卒無く細かく目配りして、ちょっと穿った視点を提出して、高得点を得ること自体が目的になってるような、優等生のせせこましさ、つまらなさにイライラする。苛立ちも望みも衝動も無いヤツが出しゃばるなよ、お前は…

矢崎泰久「「心臓破裂」で急逝した色川武大の知られざるエピソード」(「噂の真相」89年6月号)

●はじめに… 今年は正月早々に、天皇の死という異常な事件があったので、誰が死んでも、「あっ、そう」という遠い感じがしてしまう。ことに身近な人の場合は、悲しむ以前に、何故か無性に腹が立つのだ。岩手県一関市に引っ越したばかりの色川武大(阿佐田哲也)…