マンガ

『ばらの坂道』ジョージ秋山

『ばらの坂道』を、とうとう読むことが出来た。 70年代初頭のジョージ秋山が『アシュラ』『銭ゲバ』と問題作を連発し、メタフィクション的な『告白』を最後に突然マンガ家を引退、失踪した数ヵ月後、発表された復帰作。 何としても読みたいと思いながら、現…

紙屋研究所のワンピース批判に応える

https://twitter.com/hitokirigoro より。 初期ワンピースは、カラッと突き抜けたルフィのキャラクターを軸に、それぞれに弱さや理由を持つ連中が仲間になる過程(人情)を丁寧に描き、その上で自由の代償としての覚悟と矜持を示して、アンチロマンに自家中毒…

きらたかし『ケッチン 1』

のべつだらだらと繋がってる感じに抵抗があったり、何より細かく書き込むのが面倒くさそうで、ツイッターには二の足を踏んでいるのに、友達への返信をちょこちょこ書き込んでいるうちに、mixiボイスの方は結構常用するようになってしまった。こっちも当初は…

小林まこと『関の弥太ッぺ』 佐藤忠男『長谷川伸論 義理人情とは何か』

恥ずかしながら、原作の長谷川伸の戯曲を読んだことがなかったのだが、かつての東映での山下耕作×中村錦之助による映画化作品に比べて、冗長な「泣き」の場面を整理して、爽やかな男らしさに的を絞った描き方で、行間を語り過ぎない、リズムとテンポが心地い…

赤灯えれじい東京物語

『赤灯えれじい』連載終了後、ヤンマガ誌上で断続的に発表されていた、サトシとチーコの過去や後日談を描いた番外編が1冊にまとまった。単に物語を読むということを超えて、彼らには同時代を生きる隣人という親しさを感じるので、何だか久しぶりで友達に会う…

『青春少年マガジン1978〜1983』小林まこと

このところ、マンガ家と編集者のトラブルがよく取り沙汰される。 出版業界というのは、傍目に派手なイメージと違って実は小さな産業だから、明文化された契約やルールよりも、個々の現場の慣習、情実によって回ってきた、古い体質の社会だ。僕ら、出入りの零…

『この世界の片隅に 下』 感想の続き。

http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20090507#p1からの続きです。 先日書いた『この世界の片隅に』の感想に、mixiの方でたくさんのコメントをいただきました。 みなさんとやりとりの中で刺激される形で、漠然としていたた思いをかなり形にすることができた…

『この世界の片隅に 下』の感想と、清志郎の死について少し

自分がこんなにも、戦前の人々の思いや、暮らしぶりといったものに拘るようになったのは何故だろう。 幼い頃から、明治生まれの母方の祖母と同居し、両親以上に親しい存在だったことがまず大きいと思う。 加えて、個人の自由や平等というものが絶対の正義の…

銭ゲバ

先日、オバマの就任演説と、それに熱狂する人たちの映像を観ていて、今更ながら、彼我の文化とメンタリティの違いを強く感じた。 オバマに比べて日本の政治は、トホホ…ということではなくて、カリスマ的な正しい人が国民に向かって「社会の当事者としての責…

赤灯えれじい(続き)

〆切と引越しを目前に控える中、風邪で丸二日ダウン。 首のリンパが腫れて肩が異常に凝り、頭がガンガンして仕事にならないので、だらだらと『赤灯えれじい』の続きを読む。 後半、どんどんシリアスな展開になってきてびっくりした。 このマンガは日常、特に…

きらたかし『赤灯えれじい』

既に連載も完結していて、今更話題にするのも間が抜けてるかもしれないけれど、おっさんなので許してください。 色んな人から、きっと俺好みのマンガだからと薦められていたのだけれど、フリーターとヤンキーのしょっぱい恋愛の話ってことで、読んでて寂しい…

紡木たく12年ぶりの新作! 『マイガーデナー』(編書房)

http://www.amushobo.com/index.html http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-434-10674-3.html 一昨年、版元となった編書房のHP上の日記で、「紡木たくと新作の打ち合わせ中」との記事を読んで吃驚して以来、無理な期待をしないよう、でも、内心では心待ちに…

闇金ウシジマくん

少女マンガから突然話は飛ぶが、先週の「スピリッツ」の『闇金ウシジマくん』はよかった。 このマンガ、現在の新貧困層というか、目先の盛り上がりしか眼中に無いギャル男や非道な振る舞いに開き直るヤンキー、依存症OLや無気力なニート、フリーターといった…

少女マンガいろいろ(2)

「コーラス」の別冊ふろく(何だか懐かしい)でついていた、よしまさこ『地下室の四季』という中篇も良かった。 突然の事故で両親と愛犬を失って一人ぼっちになってしまった中学生の女の子、四季は、子供のいない叔父さん夫婦に引き取られる。二人はいかにも…

少女マンガいろいろ(1)

映画公開に合わせて、くらもちふさこ『天然コケッコー』の新作が載っていたので、10年ぶりくらいで「コーラス」を買って読む。 本編冒頭の、東京からイケメン男子の大沢君が転校してくるエピソードを、大沢君視点で描きなおしたような話。 東京での大沢君は…

すぎむらしんいちの新作

アッパーズ廃刊でちょっと中途半端に終わってしまった『サムライダー』以来、モーニングで久々に始まったすぎむらしんいちの新連載『ディアスポリス』。 『超学校法人 スタア学園』以来、固定ファン以外の目に触れる機会が減っていたので、特に古谷実や望月…

松本零士『男おいどん』

足の裏に突然できた血瘤の手術の予後で、ほとんど外出できないストレスもあって録りためてたCSの成瀬巳喜男特集をちびちび観たり、藤子Aの『愛...知りそめし頃に』とか松本零士の四畳半モノとかを再読一気読みしたり... 松本マンガ名物の章末モノローグ、初…

『スティール・ボール・ラン』荒木飛呂彦

ようやく単行本で通読。 「東洋人が犬を殺してナベで煮て食ってます フランス人の男女がオッパイとかチンとか丸出しで ビーチに寝そべっているしケンカになりそうです」 「どーしても犬を食うとか 下半身を出すとか そーゆーことをしなきゃあならないのか尋…

『働きマン』安野モヨコ

「恋愛」だの「ダイエット」だの、女子のミもフタもない欲望を、彼女達の井戸端会議そのままのノリで暴走しつつも自家中毒せず(いや、多少自家中毒ぎみにか 笑)、しかし客観的にもなりすぎず、迷走しまくる当事者による「ネタ」として語れるバランス感覚と…

『シガテラ』、相変わらずオモシロイ(ネタバレあり)

南雲さんと付き合い始め、幸せの味を知ってしまってから、以前より弱くなったんじゃないか、孤独に耐えられない依存体質になっちゃったんじゃないかと悩む、幸福貧乏症の荻野君。 が、考えてみるとそれは違う。独りで苛めを受け続けていた頃は、そもそも幸福…

しかし、古谷実はエライなあ。

よく、『ヒミズ』の虚無から無事に揺れ戻して来たよ。 『僕といっしょ』『グリーンヒル』や、同時期の諸短編で彼は、貧乏だったり、ブサイクだったり、心が弱かったり、頭が悪かったりで、なかなか世間への取っ掛かりもなく好意も得られない連中が、「成長に…

『シガテラ』が面白い!

おかげで、『スタア学園』や『ビーバップ』終了以来すっかりご無沙汰だったヤンマガを、また毎週立ち読みするようになった。 こっちは後ほど詳しく書きます。

すぎむらしんいち『サムライダー』連載終了(ネタバレ注意!)

う〜ん。まあ、こんなもんなのかな... 通過儀礼をやり残した(という意識を抱えた)まま、だらだらと半端にお茶濁してるおっさんたちが、もう一度きっちり突き抜けようとする話を、直球、しかもエンタテイメントとしてやろうとした本作。その心意気や良しな…

91年。調度『瞬きもせず』や『純』の直後くらいの作品。

円熟期といおうか、その後どんどん丸っこく穏やかで透明な感じに向かっていく手前、繊細な中にも、まだリアルタイムの生々しい表情、ディティールを感じさせる。画風を含めたテイストが個人的にいちばん好きなのがこの時期だ。 普通に友達づきあいしながら、…

上村一夫に、『関東平野』という自伝的長編がある。今、現物が手元に無いので記憶が曖昧なんだけれども…

上村の分身である主人公金太は、終戦直後の小学生。銀子というオカマ少女の親友がいる(彼女が男であることは、学校では金太しか知らない)。 ある日の学級会で、登下校時の買い食いを禁止することが決まった。民主主義の世の中になったので、クラスのルール…

件の中森コラムに触発され、

また『天ない』世代の同居人の影響もあって、矢沢あい『NANA』 http://www.geocities.co.jp/AnimeComic/7712/ を最新刊まで通読。いやあ、面白い! 久しぶりに俄然盛り上がっています。俺は、すでに自分の「色」や属性を決めてしまっている人の言葉や物語より…