2022-01-01から1年間の記事一覧

最後に残るものは何処へ行くのか(Twitterの会話から)

https://bakuhatugoro.hatenadiary.org/entry/2022/12/16/114935で書いた民主主義とか人権というのはあくまで一つの例で、現実というのは実際には二択問題のように選択肢が提示されていて、それにマルバツで答えればいいという形にはなっていないですよね(む…

「考えること」の本質的な恐ろしさ(Twitterの会話から)

ちょっとだけ差し出がましいことを言うと、○○さんは、世の中とか物事には正解というものがあるはず、あって欲しいという気持ちがとても強い方だと思うんです。だから、それがわからなかったり、無かったらという不安を、とても強く持たれていると。僕は、普…

「公正な客観性」は存在しない(Twitterでの会話から)

僕は、正確には公正な客観性というのは存在しないと思っていて、人が社会にしろ他者にしろ全体を見通して把握することは不可能だと考えます。この自覚を前提に生きることが、未知の部分への謙虚な姿勢を生んで、公正や客観を努力目標として持ち続けることを…

或る冬の日

午後から歯医者に通院。いきなり親知らずを抜くことに。既に二本抜いていて、痛みが無いことは知っていたので緊張はしなかったが、麻酔が切れて多少腫れぼったくジクジクしている。それよりも寒くなってきたせいか、鬱というほど大袈裟では無いのだけれど、…

男もつらいけど、女もつらいのよ♪

昔は戦争で体を張ったり、厳しい肉体労働を引き受けたりといったリスク(に耐える誇り)が男らしさの保証になっていた。けれど今、そうした男にしか出来ない仕事なんて僅かだし、実際、共働きじゃなきゃ生活が成り立たない。子供だって育てられない。そんな条…

『音楽誌が書かないJポップ批評尾崎豊』文庫版のAmazonレビューを批判する

https://www.amazon.co.jp/%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E8%AA%8C%E3%81%8C%E6%9B%B8%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%81%84J%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%97%E6%89%B9%E8%A9%95-%E5%B0%BE%E5%B4%8E%E8%B1%8A-%E5%AE%9D%E5%B3%B6SUGOI%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%88%A5%E5%86%8A%E5%AE%…

『頭脳警察セカンド』ライナーノーツ

『頭脳警察セカンド』こそは、正に、あらゆる意味で特権的な、ロックアルバムである。日本のロック史において、最も祝福された存在は?と問われたら、俺は迷わず頭脳警察、PANTAと応え、アルバムでは本作を挙げるだろう。何のエクスキューズも必要としない、…

武田百合子(談)「夫・武田泰淳の好きだった言葉」(2)

https://bakuhatugoro.hatenadiary.org/entry/2022/12/11/165307からの続き 大好きだった映画 何にでも興味を持つ人で、殊に映画を見るのは好きでした。映画を見に行く理由の一つは、ふだんあまりタバコを吸い過ぎるから、映画館に入っていると、少なくとも…

武田百合子(談)「夫・武田泰淳の好きだった言葉」(1)

象に向かって吠える虎 無駄な抵抗はおやめなさいーこんな風に、武田は、しばしば私にいっていました。めんどうくさがり屋でしたからねえ。人生は流れるように流れていくんだよ、そんなふうな意味でこの言葉をいいたかったのかしら、事あるごとに、私に言った…

「弱者」が嫌い。フェアな強者でありたい。

どんな人もエゴで生きていることにかわりはないし、だからそれは取り立てて責めるにはおよばないと思っているけれど、弱さ辛さを売り物にしようとするヤツは、人の弱者への遠慮や負い目を利用しつつ、自分のエゴを巧みに隠し、裏口からの権力奪取を狙うから…

尾崎はなぜ「恥ずかしい」のか

尾崎豊ほど、他人と話題にすることがためらわれるミュージシャンも他にいない。現在のように一方で時代遅れなヤンキー兄ちゃんの陳腐な反抗の象徴のように言われ、また一方では心の弱さに開き直って溺れこんでいるような人たちの依存の対象のようになってい…

神代辰巳×萩原健一覚え書き

「がらんどうの妄執」 「神代×ショーケンコンビ」の最高作だと信じる『アフリカの光』をはじめて観た時、内容も感想も、到底簡単に整理して伝えることができず、とにかく引っかかりのありそうな友人、知人に片っ端から薦めて廻った。雪に白く閉ざされた冬の…

武田百合子「天児さんへ」

昨日、学校できいた話。ある種の魚は、はじめ雄として成熟する。それから雄の器官が退化して雌として成熟する。だから元は一つなのである。その雌とその雄が交尾して卵を産むんだって。実に妙な話だ。一生のうちに雄と雌を経験するわけだ。人間はもと魚だっ…

色川武大「僕の比喩的人生観・男はオオカミ的生き方をする

僕は十三、四の頃、お茶の水駅や電車の中などで毎日スリになる修練を積んでいた。目と頭では、相手のどこにサイフがあるのか見当をつけて探ることができるのだが、いざとなると手が動かなかったものだ。結局、スリにはなれずじまいだったけれど、僕にとって…

ウォーキズムとキャンセルカルチャーの蔓延による苦境についてのメモ

どうも、自分の状況がいよいよ煮詰まってきているので、うまく書けるかどうかわからないが、できるだけ状況を整理してみようと思う。コロナ禍や経済的な下降による不安な世情、そしてウォーキズムやポリコレの流行のため、それまでたとえばカトリックとプロ…

現在の真に重要な論点について

このところ自分の過去の文章を、SNSにリンクしなおす為にいくつか読み返していて思ったのだけれど、かつては僕の言っている程度のことは、社会での経験と本で学んだ理念の量が極端に逆転しているようなごく狭い出版業界やアカデミズムの派閥内部ならともかく…

懐かしい人

自分の昔の文章をいくつか選んでSNSに上げなおす作業をしていたら、なんだか懐かしい人に会っているような気持ちになって、ふいに向田邦子のエッセイを読みたくなった。自分の文章を読んでいてこんなことを思うのもおかしいが、「こういう(文章を書く)人、い…

ミロンガ

神保町のミロンガが無くなってしまった。建物を取り壊して、すぐ近所に移転するだけらしいが、昔らんぼおだったというあの建物が消えてしまったことが哀しい。当たり前に、神保町には通っていたのに、あの路地をわざわざ覗かなかったから、まったく取り壊し…

武田泰淳『無感覚なボタン』より

「人間の原始性、今までの古い意味での人間らしさは、この種の無感覚を嫌悪し、それに反対する。良識、デリカシー、もののあはれ、ヒューマニズム、人情、愛、すべてこれらのかつて美しいと信ぜられたものたちは、この無感覚を防ぎ、それを弱め、くずそうと…

山田さんの「揺れ続ける」強さ

僕は40代半ば。このところ山田太一ファンであることを公言する機会も多く、『ふぞろいの林檎たち』など山田さんの代表作をリアルタイムで接してきた世代と受け取られがちなのですが、実はかなりファン歴は浅く、ここ10年あまりの間にCS、BS放送などを中心に、…