眠気覚ましの散歩と長谷川伸

相変わらず眠ダルさが抜けず、かといって日々のライスワークは待ってはくれないので、眠気覚ましに散歩ばかりしている。そして、古本屋の均一台に引っかかっては、少しずつ積ん読本が増えていく。活字を追っているとすぐに瞼が重くなって、なかなか消化できない。
今日は盛林堂書房にて、均一台ではなく店内に長谷川伸の戦前の単行本が数冊並んでいるのを発見。小説はさすがにそれなりの値が付いているけれど、作家初の随筆集『耳を掻きつつ』が自分のような者にも手の届く安価で、迷わず購入してしまった。未文庫化なのに加えて、装丁や旧い活字に発表当時の時代の息吹を感じて嬉しい。
長谷川伸の文章は、文体も内容も、一見そっけないくらいさっぱりとした書きぶりだけれど、そこに逆に恥じらいと芯の強さを感じて気持ちがいい。この世には思うに任せない辛いことの方が多いことを身にしみている書き手が、それを当然事として大袈裟にならず差し出すから、同様の気持ちの読者が安心して気持ちを預けられたのだろうと思う。