近くの身内より、遠い他者への配慮を

自分の好きな対象に対しても、同好の人たちの目が気になって、なかなか率直な感想や考えが言えない。これは、自分にとって近い人間関係であるほど、率直な意見や批評、批判批判が躊躇われることと同じですよね。だから、よその世間の不正や、旗色の悪い感性や価値観、無難な一般論に対しては、いくらでも後乗りでキッパリ放言して溜飲を下げられるし、それを隣人と共有することも安全、簡単。そんなふうに多かれ少なかれ僕らは生きているけれど、それが僕等の社会を息苦しくしている元凶そのものでもある。
そういう細心で臆病な僕等の気質や生き方は容易く変えられるものではないけれど、せめていくらかでも自覚する努力を忘れず、この気質の短所によって起こる悪を他者のみに問い押し付けようとせず、自分を棚にあげずいくらかでも寛容であろうとすること、そしていくらかでも自分の気質のマイナスを自制しようとすることが、個人に出来る一番大切なことなんじゃないかと思う。