面倒がらずにケジメは守りたい

「昨夜、突然、花子の知り合いのM氏、大学生を連れて美術全集を借りに来る。さっさと運びはじめる。花子もM氏も当然のような顔をしている。私は怒る。花子「うちの本でしょう。貸してあげたっていいと思った」。私「うちの本ではない。おとうさんの本だ。おとうさんの本を私や花ちゃんは見せて頂いているのだからね。おとうさんに黙って貸すことは出来ないよ。きちんと挨拶がなければ貸さない。挨拶があっても貸したくなければ貸さない」。花子泣く。ひと騒ぎあって、主人はM氏と話す。全集を貸していいということになった。そんなことのため夜のうちに支度が出来ず、遅めに出る。九時半。今回は東京も冷え冷えとしている」
武田百合子富士日記

あまりきっぱり自分に固執し過ぎるのは窮屈だ、グレーゾーンを多めに持ちたいと思う方だけれど、自分と他人の区別がいい加減になって、際限なく思い込みを押し通せる気になるようなだらしなさが蔓延ってきているのは嫌だ。面倒がらずに、俺はあなたとは違うとはねつけなきゃいけないと思っている。