『夢に見た日々』

未見だった山田太一ドラマ『夢に見た日々』をYouTubeで見ている。まだ途中だけれど、予想を超えた深まり、奥行きに嬉しい驚き。
歪んだ孤独な人間の酷薄な割り切りが競争原理の中では力を持ったり、見栄や意地で失敗し続け周囲の信頼を失う人間が魅力的に描かれたり。なかなか口にし難いそれぞれの人の根っこが露わになりなる辛いシーンが、そうしたどうにもならなさを抱えた各々を、ただ否定したり、克服しようと迫るのではなく、それが人間だと受け入れる広さを生んでいく。そんな、山田ドラマの根本がとてもはっきり出ている。
弱さやだらしなさと、裏腹の優しさ。解決できない事情を各々抱えながら、すれ違ったり支え合ったり生きていく人々様子が、反語のように積み重ねられていく。トレンディドラマが溢れていたバブル期に、人間の孤独で面倒な根っこを掘り下げたこんなドラマが作られていたことに驚くが、世の中丸ごとが浮かれているような時こそ、取り残された人間は孤独に焦り、内省的になるものなのかもしれない。山田太一ドラマはこの時期以降、後期のものこそ素晴らしい。