ウィルコ・ジョンソンvsTheピーズ

28日恵比寿リキッドルーム、行ってきました。
ピーズのライブは久しぶりだけど、客がかなり若い。ウィルコと対バンなのに、同世代以上は全体の1割くらいしかいないんじゃないか? 男女比は5:5くらいだけど、昔にも増して野暮ったい客が多い。特に男。スポーツ狩りが伸びたボサボサ頭で、バッグを袈裟掛けにしてるような、モロにオタクっぽい子達が結構な割合で混じってる。今、ロックを真剣に聴いてる子たちって、こんな感じなんだな…
そんな、きらたかしのマンガに出てきそうな彼らが、凄く嬉しそうに(でもぎこちなく遠慮がちに)体をゆすったりジャンプしたりしてる様子を見てると、なんだかやたらと優しい気持ちになる。彼らにピーズの、トッポくてだらしない感じが、うまく伝わってるといいなと思う。


ピーズは、憧れの人との対バンの興奮で、かなりテンション高い。
はる「俺たちにとって、仮面ライダーみたいなもの」
アビさん「興奮で昨日は眠れなかったよ。こんなのはじめて。さっきユンケル2本飲んだ」
でも、必要以上に硬くなるってこともなく、わざわざそれっぽいロックンロールだけを並べるようなこともせず、最近の曲を中心に、現在進行形の彼ららしいライブだった。ファンサービスに初期ナンバーをやったりしなかったって意味では、いつものワンマン以上に素の彼ららしくて良かった。彼らなりに重ねてきたものを率直に表現する自然な自負と自信が感じられて、日本のロックバンドの成熟を感じた(まさに「ありえない光を探すより そのツラを描け」だ)。
しかし、あらためてアビさんのギターはいいなと思う。ザクザクと硬質な分厚さと、無骨な歌心が絶妙に両立した、凄く記名性のあるプレイ。ギターを抱きしめるように思いを込めるスタイルにも、いつも以上に気合いが込もって見えた。


還暦過ぎのウィルコは、とんでもなく元気だった(しかも、フジロック3daysの直後!)。長身痩躯ではげ頭のかくしゃくとしたジイさんが、ピンと背筋が伸びた姿勢のよさと、あの見開きっぱなしの眼光で、ステージ中をすべるように横移動しまくり。ガッキンゴッキンのカッティングをキメまくり。
ただ、ベテランミュージシャンにありがちなことだけど、あの3コードな曲だけの並びで、セッション風に延々間奏を伸ばしすぎるのは、正直ちょっとしんどかった。ウィルコみたいな人は、いつまでも2、3分のロックンロールを立て続けにバシバシキメてくれる方がかっこいいとも思うし、単純に演奏時間が長くてちょっと疲れた。しかし、こっちは腰が痛くなってるのに、ベースのノーマン・ワット・ロイ共々、アンコール含めて2時間、まったく疲れも見せずテンションが変わらないのは、心底凄いと思った。ステージ袖ではピーズのメンバーや、鮎川誠、元ミッシェルのチバ達が嬉しそうに観ていた。
英語が堪能な人によると、後半のMCで「亡くなった人たちは星になって、生きている人たちの胸の中に生き続ける」といった意味のことを話していたらしい。ウィルコ自身も数年前に奥さんを亡くしているし、ノーマンはプロッグヘッズで清志郎と共演してる。それに先日のアベフトシ氏の訃報。大袈裟な追悼ムードは全然ない、軽快で楽しいロックンロールなライブだったけど、歳を重ねてもまったく変わらないウィルコ・ジョンソンの「芯の強さ」がすべてを跳ね返していた。本当に格好よかった。