『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』(70年日活 監督 藤田敏八)

このところ、渡、渡瀬兄弟の映画ばかり観てる気がする。
(この二人の共演、映画だけじゃなく雑誌の対談企画なんかでもまったく見たことがない気がするんだけど、何か事情があるんだろうか?)
中でも渡主演の日活ニューアクション『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』は面白かった。
もともと、藤田敏八のアンニュイ青春ものとはあまり相性が良くないし、ニューアクションの中でも『野良猫ロック』とかは、風俗的にはカッコイイものの、中心になるスターの個性が不在ってこともあり、散漫かつ子供のごっこ遊び的箱庭感があって途中で退屈になることが多いんだけど、これはそうしたアンニュイ坊や達の中に『無頼』の人斬り五郎がそのまま放り込まれて、良い感じに異化作用が起っていて凄く面白かった。
アウトロー志向のボンボン(実はインポ)の原田芳雄が、沖雅也らバイカー集団から預かったマリファナをやくざに奪われ、自分ひとりでは手に余る状況を何とかしようと、女(梶芽衣子)の元の男だった一匹狼のヤクザ渡哲也に助けを求める。
精一杯強がる芳雄さんだけど、彼のヤキ入れでは口を割らないチンピラの指を涼しい顔でボキボキ折りだす渡にびびりまくったり(仏心を出した良雄さんが放ってやった治療代を、渡がすぐ自分のポケットに入れちゃうのも良かった)、梶芽衣子を挟んで微妙な三角関係になった時は微妙に寂しい。沖雅也たちに手を焼いて、妹を誘拐されて強姦されたりするが、そんなバイカーも渡の前では完全に子ども扱い。その辺の力関係から、良い具合にペーソスが引き出されていて好感が持てる。
渡の方も、『無頼』シリーズなんかだとどうしても任侠映画の定番の中での一趣向という受け取られ方になってしまうところが、彼らとの化学変化のおかげで、「俺は誰とも赤の他人だ」と、妙にのびのびと乱暴に存在してるように見える。原田芳雄のことも憎からず、可愛らしく思ってるようだし、60年代末のおしゃれな新宿の街を若者達にまじって人斬り五郎が歩いている絵は、妙にシュールで楽しい。
そして、何だかんだ言っても、渡の野太くてアグレッシブな個性のおかげで映画がビシッと求心力を持って締まり、同時に敏八さんのおしゃれな個性がうまく引き立てあって両立している(そっちの方も、渡のおかげで閉じた自家中毒をまぬがれていると言おうか)。



たまたま先日骸吉君と話していて、昨年の『仮面ライダー響鬼』における30代のオヤジと10代の少年の交流と成長がどうもうまくいっていない、これが歯がゆいという話を聞かされていたんだが、今の30くらいだと変わり者といってもオトナコドモな自由業くらいにしか見えないし、そもそも30代と10代に大したジェネレーションギャップがない気がするので、現在に対する異化作用というのが起きようがないんじゃないか。
「ドント トラスト アンダー60」をキャッチフレーズにした雑誌とか、作ってみたい気がする。