ここのところずっと、オスっぽい方向の興味に邁進していた反動の表われだろうか、

bakuhatugoro2004-02-14


急にプリテンダーズが聴きたくなり、近所の中古CD屋に走った。
同時に、先日の来日公演を、多忙と金欠で断念してしまったことが、激しく悔やまれる。
4枚目あたりまでのオリジナル盤や、シングルズは持っていたはずなんだが、昔誰かに貸し出したっきりでことごとく手元に無い。そうした、所有欲とかこだわりとかから無縁な存在感が、とてもプリテンダーズらしい。


キンクスのように偏屈ではなく、スモールフェイセズのようにフェティッシュでもない。
瑞々しく青春と少年性を感じさせるけれど、フーほど固く攻撃的でもない。
いわゆる良質ポップのような密室性はなく、フォークロックほどレイドバックもしていなくてモダン。
AORほど、洗練に傾斜してもいない。あくまでもロックンロール。
それでいて、90年代以降の青春パンクほど疾走感一辺倒でもなく、しなやかで柔らかい。


本当にオーソドックスで、どこがどう新しいということもないブリティッシュロック。敢えて言えば、「良質なロック」という呼び方がふさわしいような。そういう意味ではニック・ロウデイヴ・エドモンズなんかに近い感じもするけれど、さらに甘酸っぱい気持ちにさせるような、リリカルな要素が加わる。


バーボンにチョコレートのオールドロックでもなければ、クリームソーダやレモネードのギターポップでもない。
例えるなら、子供の頃飲んだ三ツ矢サイダーのような味のするロック。


屈折や奇矯さを打ち出したニューウエイブ以降のノリが主流で、当時の洋楽がどうにもしっくり来なかった80年代。リアルタイムのバンドで、プリテンダーズだけは大好きだった。シンプルなロックンロールと、瑞々しい叙情が、すごくしっくりきた。
生身の肉声を感じさせ、同時に古臭くもなかった。
ヤンキーでも体育会系でもなかったけれど、開き直ったオタクも嫌だった、俺の青春がここにある!って感じだった。


観てきた友人によると来日公演は、当時のファンと外国人がほとんどで年齢層高め、空席も多かったらしいけれど、クリッシー・ハインドは今もシャツとブラックジーンズ、テレキャスターが良く似合うシャープな体形で、クラブでの演奏のようにメンバー達との気さくなしゃべりを交えながら、淡々と、だけど柔らかく、懐の深いロックを瑞々しく演奏し、歌っていたらしい。
若々しい気取りや気張りはないけれど、とても趣味のいい空気が会場を覆っていたという。


いやあ、やっぱり行きたかったなあ。きばって一番に思い入れたり、フィティッシュに愛好するような対象じゃないから(だからこそ、実はかけがえが無いんだけど!)、ついつい日々にかまけてやり過ごしてしまった(それにしても、コンサート料金8000円なんてのは、なんとかならないものか...)。
また来てくれるかなあ。また20年後なんて言わず。


そして、こういうスタンスと佇まいで活動を続けられるバンドが、日本にもたくさん出て来てくれるといいな。


僕は思春期からずっと、クリッシー・ハインドの、すずしげでかつ柔らかい佇まいにぐっときまくっているんだけれど(一方、一人称をわざわざ「僕」にして歌うようなタイプの女性歌手は非常に苦手だ)、決して大人や年上から可愛がられるようなタイプの無邪気で可愛らしい子供ではなかったから、そういうお姉さんを遠くから眩しく見ているような、甘酸っぱい思い出が具体的にあるわけじゃない。
なのに何故か、そうした憧れが自分の中に原体験のようなものとして、定着してしまってるところがある。
思うに、ガンダムのセイラさんやマチルダさん、ハモンさん(みんな今でも「さん」づけしてしまう...)そしてクリッシーなんかを思い描きながら、ずっと無意識に自分の中で憧れや甘酸っぱい感覚をシミュレートしてきたものが、半ば強固な記憶のようなものになっている気がしないでもない。


う〜ん、我ながらちょっとイジマシイというか、少々ヘンタイっぽくもあるが、まあ具体的な機会がなかったんだから勘弁してやってくれ。