TBSドラマ『向田邦子の恋文』

こちらは、やたらともったいぶるだけもったいぶってみせて、実は何もありませんでした、という印象(敢えて言えば、底の浅いスキャンダリズムと大仰なミーハー根性)。久世光彦って、昔からずーっとこうだな。逆に言えばそれだけでここまで凌ぎきっちゃうツラの皮の厚さが凄いというか、「THE芸能界」って感じだが。


あと、こうした根本的な姿勢の胡散臭さもあって、ラスト近くに「締め」っぽく入った「どんな家庭だって、一歩中に入れば何が出てくるかわからない。けれど、あえて平穏に振る舞うことは、決して虚偽ではなく、平和でありたいという人々の願いから起こり、それが家庭の平和の姿そのものでもあると思う」といった意味のナレーションに、何となく引っかかるものがあった。


確かに、「人間、どうせ一皮剥けばこうだ」的な本音主義は、乱暴で浅はかな二元論から発しているのが大抵だとは思う。何でも容易く口にして自分をすっきりさせることよりも、相手を慮って胸に秘めることが優しさであることも多い。
けれども、敢えて蓋を開け、自分も相手も傷つける痛みと孤独を引き受けてでも、問題に真摯に向き合いたい、向き合わなければならない、という立場の人もいる。だから、こうしたことは、誰が、どういった状況に対して言っているかというところが一番重要で、デリカシーが問われるところだと思う。だから、スローガンのように一人歩きしたり、特に蓋をしたがっている側から出るとこんなにいやらしい言葉もないだろう。
そして今、向田邦子を殊更ありがたがるような層がどちらかと考えると、多少抵抗を感じてしまったわけだ(これは当然、向田作品そのものの評価とはまた別の話)。


そして何より、こうしたスキャンダル的な商売をやっておいて、最後にこうした気取った物言いを付け足されても、アリバイ作りっぽいよな、と。


新年早々、毒吐き失礼。