追記

例えばあの『探偵物語』の魅力の大きな要素として、「俺も工藤ちゃんタウンに住みたい」「街の仲間に入りたい」というのがあった。
田舎からあぶれた、ちょっといかがわしく、くたびれた連中の優しい吹き溜まり。
ディアスポリス』も、後ろ盾のない個人、弱者の相互扶助というのが大きなテーマになっているはずだが、主人公のキャラクターと合わせ、サブキャラ、ゲストキャラ、そして街そのものの描かれ方が細かい(よく取材されているっぽい)割に、魅力が薄い。
設定の説明以上の生々しさに欠けているというか、描写にシンプルな端的さや自由さがない。
これはやはり、調べてはいても、自由にアドリブがきく程には世界に入り込めていないってことだと思う。



テコ入れのためか、話が本筋に入ったのかは定かじゃないが、異邦人の敵が日本政府や警察(の中の秘密組織)になってきそうなのも、あまり面白くない。街の連中のキャラクターと共に、彼らを差別し、また無視する、ミーイズムに首まで漬かり、ただただ自分本位で他人が面倒くさい我々一人一人、現代庶民多数の現実と意識を描き出すことにこそ力を尽くさなければ、それこそただの「マンガ」で終わってしまうと思う。

探偵物語 DVD-BOX

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