『ロック画報22 映画×ロック』(ブルースインターアクションズ)

bakuhatugoro2005-12-17



出ました!http://www.p-vine.com/app.php/mo/Shop/ac/ProductDetail/id/2971
「大和」ムックと並んでばくはつ五郎、本年最後の力仕事。
長文レビューでは、70年代東映を担当(以前楼主様よりうかがった、「ダンプ渡り鳥」の強烈な裏話も引用させていただきました!)。今年後半、ひたすらヤクザ映画と戦争映画のドキツいダイナミズムを浴び続けた成果がここに...
「大和」ムックの東映高岩会長インタビューとセットで、また「tone」(ユニバーサルコンボ)2号http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20050625での笠原和夫論の続編としてお読みいただけたなら、よりコク深く味わっていただけると思います。


本特集では他にも、ショーケン×神代×井上尭之のトライアングルによる「青春の蹉跌」「アフリカの光」といったマイフェイバリットムービーとそのサントラのレビュー、そして、ゴジ、工藤栄一、優作、TATTOOあり、竜二、ゴッドスピードユー、ピラニア軍団などなど、ショートレビューにネタと情念を大量に叩き込んでおります。


他にもアプレ文筆家奈落一騎君による、日活ニューアクション、必殺シリーズ安藤昇、裕也らへのリスペクトとサービス精神漲るショートレビュー、かのファンタスティックエクスプロージョン、そして音楽殺人未遂の裏番長永田一直さんによる、渾身の大野雄二賛歌など、友人知人中の最精鋭部隊も大活躍しています。


しかし、そういった個々の濃さ云々以前に、今特集を編集し、大量執筆もしている佐藤洋笑氏の、70年前後のアングラ映画、そしてプロクラムピクチャー末期のヤサグレテイストへの深い共鳴と愛情、そしてそれを映画史、ロック史的に膨大複雑な人脈を紐解きつつ位置づけるデータ量と論理性が圧倒的で、身贔屓や社交辞令一切抜きに、ロック画報史上、否、数多あるこのテのムックの中でも特筆に値する濃さとテンションの一冊になっていると確信します(個人的には初期映画秘宝の傑作「男泣きテレビランド」以来の手ごたえを受けました)。
最近のこのテのムックは、枝葉末節の情報量の充実に反して、現在的な「オタク」的感性に媚びた単なる「バイヤーズガイド」に堕しているものが非常に多く、僕自身読者としても書き手としても半端なブレーキを踏まれては葛藤することが多いのですが、本特集においてはブレーキどころか相互の熱の相乗効果で加速に次ぐ加速、圧倒的な情報量と、その背後にある時代の息吹や、ある状況を生きた個々の思いと受け手との共鳴がスポイルしあうことなく一体となった内容になっています。
はっきり言って、レアグルーブ的なちゃらいノリじゃなく、当時の息吹をそのまま伝える形でのこうした邦画サントラガイドというのは、おそらく初めてじゃないでしょうか。


佐藤氏の盟友であり、気鋭のシナリオライター膳場氏http://zenbar.seesaa.net/article/10732211.htmlによる、小水一男、石井聡互らキーパーソンへのインタビューも秀逸。
杉作さんによる、東映&大都会レアネタ満載の三上寛インタビュー、そしてこのところ消息が心配だったゴジ長谷川和彦ビッグマウスの健在ぶりにひとまず安心した、小野島大氏によるインタビューなど、本当に読みどころだらけ。



今回ばかりは、友人諸兄並びに、本ブログ読者の皆さんも自信を持ってお薦めします!
(惜しむらくは、「大和」ムックと読者がほとんどかぶらなそうなこと。併せてお読みいただけると、情念とバカが矛盾なく共存する東映(と大衆映画の幅と底力の本質)の魅力が見えやすくなるのだが...


ロック画報 (22)

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