寝正月


ぼーっと脱力した気分のまま、おせち食って酒飲んでうとうとして、起きてまた飲んで、と、今年は憧れの寝正月ってやつを忠実になぞってみた。アパートで同居人と2人ってとこが、いささか日常引きずってメリハリに欠けるけど、さりとて今の実家じゃ平和で安心な正月なんて無理。
ともかく、こういう正月は本当に久しぶりなのでそれなりに楽しかったけど、さすがに2日も3日もやってると飽きてくるし、暇なら暇でいろいろ余計なこと考えてしまったりする零細自由業の因果..


そこで昨日はティム・バートンの『ビッグフィッシュ』を借りてきて観たんだけど、これが俺にはダメだった。
もともとファンタジー色が強いものが得意じゃないっていうのもあるんだが、「ボクってセンシティブでカワイイ」ってノリの婦女子層との馴れ合い方オンリーで世界が閉じてると、正直オッサンにはキツかった。
「世間で悪者って言われてるものは、大抵は孤独で礼儀知らずなだけ」なんていいフレーズもあったし、主人公(オヤジの方)に思いを寄せる女性が息子に向かって言う「あの人にとって私たちは夢の世界だけど、あなたは現実」というセリフも、夢想家の他者に対する残酷と無責任をサラっと押さえていて(意識的にかどうかはかなり怪しいが...)なかなか良かったんだが、全体としては虚言癖のダメオヤジを「カワイイ好人物」ってふうに描きすぎてるもんで、逆に俺にはまったく思い入れの糸口が無い。


正月でもやってる飲み屋がチェーン店くらいしかなくて、高円寺駅前にできた、昭和レトロ居酒屋「半兵衛」へ。
確かに一杯200円、一串70円って世界で安いのはいいんだが、駄菓子みたいな少量で当然マズい。客は若いヤツばかり、店員はサービス過剰でせかせかと慌しい。


昭和ってよりドンキホーテダイソーの飲食店版ってノリに落ち着かず、すぐに出て養老の瀧に移動。
ここは初めて入ったけれど、他のチェーン店とノリが違って、くたびれひなびた店内は中高年の客がほとんど。テレビで紳助の復帰生コメントを見たりしながらゆるゆると飲む。
「小さい頃、うちは昔お金が無かったからよくこういうところでご飯食べてた。懐かしい」と同居人。
うちは両親ともあまり酒飲まないのと、歩いて行ける距離に居酒屋が無いような、質素な暮らしが身についた田舎者ってこともあり、母親が一人でこっちに来た時など、魚民あたりに飯食いに連れて行っても「勿体無い」ってロクに注文しようとしなかったくらい。
そんなこんなを思い出しつつしみじみしながら、ちびちびと舐める梅入りの焼酎お湯割りもまた旨い。


いい正月でした。