文藝春秋9月号 特集「日本を震撼させた57冊」を読む

bakuhatugoro2004-08-22



期待していた、呉智英×福田恒存『平和論にたいする疑問』、鶴見俊輔×吉田満戦艦大和ノ最期』、浅羽通明×浅田彰『逃走論』あたりは、短文ながら力が籠っていて予想以上に面白かった(他にも、久世光彦による坂口安吾堕落論』など、天皇人間宣言直後に着想されたのではないかとの検証、仮説は、最近一連の笠原和夫ものを読んでいたタイミングでもあったため、興味深く読めた。もっとも「それから六十年、私は自分の立っている大地に、あの日そのままの、忌まわしい焦土の匂いを嗅いでいる。見回しても、見回しても、花の一輪も見えない」なんて言い様は、他人ごとみたいに詠嘆するだけなら安全だしタダだよな、気障オヤジめ!って感じだけど)。
特に、呉智英×福田恒存『平和論にたいする疑問』には、一連の町山さんとのやりとりの後ということもあって、
http://d.hatena.ne.jp/bakuhatugoro/20040802
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040801
米軍基地の存続と、周辺での子供の教育環境の確保を地続きに語ろうとするような態度に対して見解、

「軍事基地が地元にあるままでも、学童教育の問題は解決できる」


「絶対的解決などというものはありません。しかし、現状よりもよくすることはできるはずです。ところが、ひとびとは基地の教育問題を、平和論を支える一本の柱としているだけで、じっさいに事態を改善しようなどという意図は毛頭ないのです。それどころか、おそらく多くの平和論者は、事態が悪化しているときけば、平和論の支柱の太くなったことを喜びそうな気配があります」

といった引用含め、現実の局面局面においてのリアルな政治的調停を、見きわめる為の前提となる、冷静な人間観を持ちえているか、そして今度の態度が、自分の観念や思想の満足のために、現実を軽視するような傲慢が無かったかどうか、改めて意識しなおすきっかけを貰った感じだった。