ラッパー慕情

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040309


いやぁ、はっきり言って舐めてました。
凄い映画だった。
神代辰巳の映画を初めて観た時と同じようなショックを受けた。


出口なし。あってもそこには行きたくない。
そのくらいなら、このままでいい。
行きたいところには絶望的に足りない。だからただ、妄想に閉じこもる。


ひきこもりが、空虚に閉じたままじりじりと過ぎる日常の中で見る、白昼夢のような映画。
寒々しく薄っぺらい照明や、寄り過ぎで視界が狭く目まぐるしい素人臭いアングル、無駄に詰め込んだような冗長で一見散漫な編集、すべてがそれにみもふたもないリアリティを与えるように作用している。
兄弟の、隠花植物のように不健康な汗の浮いた表情。
沈滞した毎日の連続の中で無表情が固まってしまっている母親。
ゴミ焼却場の煙突。公園のカラス。
コンビニの前を行き交う暴走族。
スーパーの試食コーナー。
突飛なカタストロフやスプラッタ映像。そしてカンフー。


並べるとデタラメだけど、観終わると本当に、これしかないという印象が残る。
希薄な混沌。
前衛とか、そういう問題じゃない。
意識的になって、答えを出そうとすると空々しくなってしまうようなところを、見事に寄り切った映画だと思った。


好き嫌いはあると思うけれど、町山さんの「今年のベストに入る映画」という評は、そのまま誇張でもなんでもなかったと思いました。


ビデオは高円寺文庫センター前の「オービス」くらいでしかレンタルやってないと思うけど、4月10〜16日まで渋谷アップリンクファクトリーで上映されるらしい。
興味のある方は、是非。