活字の『近代麻雀』復刊

http://kinma.takeshobo.co.jp/bekkin/

http://www.asamiryo.jp/book52.html


目玉はやはり、阿佐田哲也単行本未収録『雀師流転』の連載と、井上志摩夫『バイニン変遷図』。
いつものといえばいつものアサテツ節だけど、

「玄人なら少々傷ついても逃げないからな。だが、どっちも命がかかるんだ。だからおいそれと無計画にはできねえ。雀荘で素人と小博打をやるのはそれの稽古みたいなもんだよ。調子を整えて、上げ潮を待つんだ」
「だが、さっきあんたは言っただろう。玄人は殺されたって銭は払わねえって」
「そうくるだろうな。それをまきあげるンだ」

なんて名調子には、条件反射でシビレる。


自分と他人を「こう」と決めてかかることができないために、片手で握手しながら片手で小突きあい、それをそうと意識しないことが処世術ってふうな市民社会でうまく泳げなかった彼だが、だからこそはじめから「食い合い」が前提の博打の中では全力で容赦なくなれる。
こうした雄っぽさとか、勝負強さがからっきし欠けている俺としては、阿佐田作品の心理戦の緊張感には、ただただビビリつつ憧れるしかない。


他にも、草森紳一『牌魂タン』とか、阿川弘之阿佐田哲也への手紙』なんて、えらくシブい文章も載ってるし、藤代三郎の競馬小説も期待できそう。
...だが、やっぱり全体にはどうにもタマ不足の感が否めないし、途絶えて久しかった麻雀活字の読者層を、イマイチ絞れていない感じ。
書き手、読者共に、これから育てるのは、ちょっと間に合いそうもない雰囲気だし。
(新刊書店が弱い高円寺とは言え、さんざん走りまわって一冊しか入荷してなかった。入荷早々売り切れとも思えんしなあ...)


取りあえず、『雀師流転』連載終了までは、なんとか持ちこたえて欲しいところ...