5夜連続で視聴率20%超=テレ朝系「弟」

bakuhatugoro2004-11-22



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041122-00000007-jij-soci


正直、ドラマ自体の出来はイマイチ、いやイマサンくらいだったと思う。
西部警察』もそうだったけど、石原プロは、己の個性の現在とのズレ加減に対して確信犯になりそこねていて、それが打ち出しの散漫さに繋がってしまってる。


家族の戦争を挟んだ一代記としては、ブルジョア過ぎて起伏が乏しく、「いい気なもんだ」って感想しか浮かんでこないし、スタァとしての重圧といった内面の掘り下げなんてのも、太陽のような屈託のなさこそが最大の魅力である裕次郎の個性にはそぐわないこと甚だしい。
だから、まるまる家族の前歴に費やした第一回はかなり冗長で退屈だったし、後半一回半分、丸ごと闘病シーンが続くのもただただ辛かった。


それでも尚、このドラマに大きな需要があったことは、よく理解できる。
俺自身個人的には、70年代のニューシネマ、カウンターカルチャー以降の、陰影が深くてアナーキーな日本映画が好きだけれど、それ以前、プログラムピクチャー時代の大スタァの輝きや安定感っていうのは、もう二度と取り戻せないものだってことも確かな事実(だから、思い切って周囲との落差を浮き彫りにしつつ「浮世離れしたくらいの豪華さ」ってところに、ドラマの焦点も絞るべきだったと思う)。
芸能人がなんら特別な存在ではなく、「みんなが神様」な均一な平板さの中で思い上がりや嫉妬が渦巻き、スタァが成立しようもない現在だからこそ、圧倒的なものとその時代への憧れは強くなる。


裕次郎を演じた徳重聡三浦友和は、かなり頑張って裕次郎コスプレしつつ好演していたけど、やはりあの「甘くて豪華な抜けの良さ」だけはコピーしようがなかった(だけど、まあそれは仕方がない。そんなものは、「生まれてこの方誰にも頭を下げる必要が無かった」ようなヤツにしか纏えないオーラだから)。
それでも徳重は線が太くてガラのでかい、そしてちょっと拗ねたようなチンピラっぽさが結構生きていて、西部警察の時とかなり印象が変わった。大根なのは相変わらずだけど、まァ、それは仕方ない。
友和も、でっぷり太った上にどうらん塗りまくった黒い顔で頑張ってたし、闘病シーンが多かったおかげもあって、あまりボロを出さずにしのぎ切った。


北原三枝役の仲間由起恵は、思いのほか良かった。
この人、こうした気品をたたえた王道の美人って絵ヅラにはまる人だったんだな。あまり「演技派」なんてことを考えて、俗な方向にやつしたりせずに、こういう役が続くといいなと思ったけど、なかなかそういう題材が今は少なくて難しいんだろうね...
江角マキコの水の江ターキーも、ガラのデカさと勝気な風貌でよくはまってた。長身で着こなす60年代ファッションが、なかなか格好良かったし。
逆に最低だったのが、久本雅美小森のおばちゃま。趣味へとフィティッシュに耽溺するような内面や背景の匂いがまったく欠けた、完全に外したキャスティングで、唯々貧乏臭かった。


そして、「西部警察」以来、ガッチリ石原軍団に付き合っている大杉漣は、芝居も処世もバランス感覚抜群で、器用だなあと思いました(笑)


しかしまあ、なんだかんだ文句いいながらも、こうした大物の一代記ってのは楽しいね。
美輪さんの『紫の履歴書』なんてのも、赤木圭一郎とのエピソードなど絡めつつドラマ化して欲しい気もするけど、それこそ役者がいないよなァ。