しかし、センチメンタルなことを言っておはずかしいのだが、

曙の試合は見ててキツかった。だいたいの予想はついていたけれど、異国の伝統芸能の世界で横綱にまでのぼりつめた男が、キメ手を全く持たない不利な戦いに、一時の見世物的さらし者を覚悟で臨まなければならないほど追い込まれた原因は、一体何だったのだろう。
必死さや頑張りは充分に伝わったけれど、それが逆に悲惨な印象を際立たせてもいた。
格闘技の世界での前途は、これではっきり閉ざされただろうし、小錦のような陽性のキャラクターではないので、芸能人になることも難しいだろう。
そうした理不尽は、実のところ世の至る所に転がっているのだろうし、誰もが覚悟でリングに上がっているものを、変な同情は筋違いかもしれないけれど、こういう瞬間や道行きの一部始終を映し出すテレビってやつはやはり残酷だな、と思った。