「鉄人28号」

篭りっきりだった分、唯一の娯楽として、久しぶりによくテレビを眺めたんだけれど、水曜深夜にやってる『鉄人28号』が楽しみでしかたない。
今期は「ウルトラQ」のリメイクもはじまったし、映画の「キャシャーン」、「キューティーハニー」、「デビルマン」など、いくらなんでもこう回顧ネタばっかじゃなあ、ってとこはあるんだけれど(そういや、NHK朝ドラの「天花」って、80年代大林映画あたりの郷愁に包んだ架空美少女フェチテイスト全開じゃないか?世の中、老化が激しいなあ...)、好きなものは仕方ない(「エヴァンゲリオン」「ウテナ」あたりを支えたスタッフによる「忘却の旋律」にも期待してるんだけど、どうにもあの萌え系っていうんですか?絵に耐えられなくてシンドイ...)


特に、オープニングの男性合唱団の歌声をバックに、もうもうと煙を吐く工業地帯の煙突をバックに飛ぶ鉄人を、大塚署長たちが眩しそうに見上げるシーンなんか、たまらん!ほんとに「ぼくらは仲間だ、正太郎、進め!」って感じだ。燃える!
警察署にでっかい氷が置いてあって、それで冷をとってる風景の描写なんかもいい。こうした生活を形作るディティールが、人の生き方や心を形作ってる様が描かれていくといいんだけど、その点ではちょっと残念でもある。
やっぱりなんだか人物描写がナイーブすぎるんだな。調度この間までテレビ埼玉で旧作の鉄人の再放送をやってたから余計に感じるんだけど、正太郎君って本当に可愛げないくらい大人なんだよ。何より横山光輝(合掌)のツルっと明朗で内面を感じさせない画風に顕著なように。
現在から、戦争の災厄を潜り抜けた、戦後のけなげな日本人の頑張りを愛で癒されたいって意図はよくわかるんだが、あの高度成長にに向かう「まっすぐな頑張り」のセンスは、ある種戦前の「八紘一宇」がそのまま引っくり返ったようなところがあるわけで(まあ、はっきり言ちゃうと、ファシズムの快感ですな。「でっかいことは良い事だ!」ってノリ含め)。みんなででっかいプロジェクトに参加し、社会を押し上げていくロマンと一体感っていうのが人々の拠りどころになっていたから。個人、とか内面とかって言葉が必然性を持って浮かび上がり、そこを拠りどころにこうした状況の否定面が広がりを持って語られるようになるのは、もっと後の時代だから。そこをスルーしたり美化したりしようとすると、どうしても力強いロマンが翳るし、変にちぐはぐなものになってしまうと思う。
現在の視点からの良い悪いって視点を盛り込むことを急がずに、こうしたノリとディティールがリアリティを持っていた時代を、その(もう現在では決して再現不可能な)快感込みで描き出す、って方向に踏ん張ってくれると、我々が「現在」を相対化しつつ、歴史の脈略を取り戻すって意味でも、さらに面白いと思うんだけど。それは、期待のしすぎなのかな?
何はともあれ、毎週楽しみに見ていくことは確実。


そういえば、そうした「けなげさ」ってことなら、俺が真っ先に連想するのは、ちばあきお「キャプテン」(特に谷口キャプテン編)。これも、ヤバいくらいに好きなんだよな。そういえば「キャプテン」のアニメ版主題歌も、男性合唱団だったな。